大毛利 亮
自動車エンジン音のCA法におけるモデル化
既往の研究における3次元における騒音伝搬解析では,点音源,線音源,移動音源に対しては3CAモデルにより妥当な結果が得られている.しかしより実用的な場面を想定した場合,点音源・線音源が妥当であるとは限らない.例えば自動車騒音を対象とする場合,音源としての自動車を点音源・線音源として表現することが果たして妥当であるだろうか,という疑問が生じる.音の発生源が車体のある一点だけでなく,複数箇所の発生源があるとするならば,音源対象である自動車の形状を想定した音源を設定する必要があると予想される.
そこで本研究では,これまで点によって表現されてきた音源に対し,実測データを用いた面音源を構築し,より実計測に近い解析を図るために,音源のモデル化を行うことを目的とした.なお,本研究におけるモデル化を行う音源の対象は自動車であり,アイドリング状態におけるエンジン音のモデル化を行う.まず,自動車騒音の計測を行い,計測音の特性について分析した.その結果,エンジン付近の計測音では実効値が大きく計測され,マフラー付近では,エンジン付近の音とは異なった低い周波数の音が発生していることがわかった.これらを基準として自動車音源のモデル化を図るために,音源の配置パターンにより,検証ケースを全36ケース行った.
その結果,エンジン付近の計測地点,マフラー付近の計測地点の区分に各々の計測音を導入したケースにおける解析値が,計測音と最も近い値が得られた.また本検証では,各音源区分を70%に縮小したケースにおいて,計測値と最も近い値が得られた.以上のことから,実効値の大きく計測されたエンジン付近の計測音,またマフラーから発生している音を計測した地点の音を基準として音源を構築することで,自動車音源のモデル化に近づくと考えられることがわかった.しかし,解析値と計測値との誤差は大きく改善の余地がある.この原因として考えられる点は,十分なケース数について解析が行えていないことが挙げられる.CAモデル内における音源構築や,解析に時間が多く要されてしまい,多くのケース数を解析できなかった点が悔やまれる.今後,ベストな音源配置を模索していく必要があり,モデルが構築されれば,より計測値と近い値が得られ,本研究の発展,解析精度の向上が期待できる.
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