ken15109

中原和哉

弾性回復率を用いたアスファルトバインダの応力緩和性状の評価

高橋　修中村　健

応力緩和は粘弾性体が有する特徴のひとつに挙げられるが，アスコンがその機能を有するのはアスファルトバインダが粘弾性体であるためである．アスコンのひび割れ抵抗性に関して，サーマルクラックのようなひずみ速度が低く載荷休止期間のある現象では応力緩和による影響が顕著で，ひび割れ抵抗性の評価においては応力緩和を考慮する必要である．そこで本研究では，幾つかのバインダ性状評価試験に着目した．当研究室によって提案されている荷重測定型伸度試験(Force Ductility Test ：以後，FDT)は従来の伸度試験機にロードセルを搭載し，供試体延伸時の荷重と変位を測定する試験である．また，米国試験材料協会(ASTM：American Society for Testing and Materials)に規定されたElastic Recovery Test(以下ERT)も従来の伸度試験機を流用しており，試験結果から弾性回復率が指標値として得られる．弾性回復率は改質アスファルト製造時にポリマーの添加量を決める指標であり，塑性変形抵抗性を評価する指標として用いられている．
本研究では，弾性回復率を用いて間接的に応力緩和性状の評価を行うことを目的とし，ERT実施時にFDTの試験装置を流用することで供試体延伸時の荷重-変位曲線，延伸停止後の荷重低下の様子を記録し，これを基に応力緩和時間を求め弾性復元率との比較を実施した．さらにFDTの結果と比較することで疲労ひび割れ抵抗性と弾性回復率，応力緩和性状との関係について検討を行った．
検討対象とするアスファルトバインダには，現在一般的に使用されているストレートアスファルトとポリマー改質アスファルトⅡ型を採用し，ポリマー含有量の違いによる差を検討すべく，両者を7：3，5：5，3：7の割合で混合し，計5種類のバインダを用意した．
ERT試験から得られる弾性回復率と応力緩和時間を比較した結果，両者の間には高い相関性が確認され，弾性回復率からアスファルトの応力緩和性状を間接的に評価可能であるという結論に達した．ポリマーを多く含む材料は高い復元力に加えて高い粘結力も付加されているため,弾性回復率が高くなったと推測される．一方，高い復元力を有するため残留応力が高くなり，応力が緩和しにくくなったと推測される．なお，経年劣化によって硬化した材料の試験は困難であるため，試験温度やひずみ速度を変更しマスターカーブを作製する等，幅広い材料に対応できるよう，またその妥当性について検証する必要があるが，今後の課題としたい．

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