氏名: NGUYEN ANH BINH
論文題目:カーボンブラックによるアスファルトバインダの性能向上に関する基礎的研究

指導教授:高橋修

概要:和文
カーボンブラック(BC)とは原料の油を不完全燃焼させて得られる煤状の化学品である. 製品の大半はゴムの補強材として,自動車タイヤ,航空機タイヤ,自転車タイヤ,ベルト,ホース,自動車のゴム部品などに使われる.また,導電材として乾電池,静電気防止用建材,プラスティック,IT機器用タッチパネルなどにも使われる.
主な用途として,ゴムの補強材の性向上に用いられているが,その製造時において,目的とする用途以外のカーボンブラックも発生してしまい,それらのほとんどは廃棄処分されている.
一方,既往の研究では,アスファルト混合物にBCを配合することで耐候性だけでなく,紫外線劣化抵抗性,塑性流動抵抗性も向上したという報告がなされている.
しかし,アスファルトバインダにBCを添加したことによる改質効果の有無や,どんな性状がどの程度向上するのかは明らかになっていない.
そこで本研究では,バインダ性状評価試験を用いてBCによるアスファルトの物理的な改質効果を定量的に評価し,性能向上に関する基礎的知見を得ることを目的とした.
検討対象としてベースバインダにストレートアスファルトを採用し,基本物性の異なる3種類のカーボンブラックを用意して加熱混合した.
添加量は5%,10%,15%の3種類,合計9種類のバインダに対して改質効果を検証した
Type Aは粒子径が大きく,凝集体の空隙は小さい.
Type Cは粒子径が小さく,凝集体の空隙も小さい.
Type Bは粒子径が小さく,凝集体の空隙が大きいカーボンブラックとなる.
検討方法として,2種類のバインダ性状評価試験を採用した.
荷重測定型伸度試験FDTでは バインダを延伸させた際の荷重-変位曲線が得られ,既往の研究よりFD値と定義した混合物の疲労破壊抵抗と,DR値と定義した混合物の変形抵抗性と相関があるとされている.また,バインダ単体の曲げ試験によって,ひび割れ抵抗性について評価した.
それではFDTの試験結果では,カーボンブラックの種類や添加量を変えてもFD値の向上は確認できなかった.
一方,DR値についてはType Cを除いて増加する傾向が確認されたから,DR値と曲げひずみについて,検討した.
最後に本研究の結論
FDTとバインダの曲げ試験を実施した結果から,カーボンブラックを添加したことによる改質効果を定量的に評価できた.
なお,Type Bのカーボンブラックを10%添加することで,ひび割れ抵抗性を損なうことなく変形抵抗性を向上できる.
Type Bは粒子凝集体の空隙が広く比表面積も大きいため,アスファルトとの馴染みが良く,強度が発現したことが推測される.

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