名前:渡邊 舞花

題名:フェロニッケルスラグ細骨材によるアスコンの塑性流動抵抗性の向上に関する研究

指導教員:高橋 修

非鉄金属スラグは,建設分野への利用が遅れており,有効利用されずに処分されてきたものが多い.この処分は,従来自社処分として企業所有地内の埋立てや,製錬所の臨海立地を利用した埋立てとして行われてきた.しかし近年,企業内のスラグ処分地の不足が問題となっている.一方で,天然骨材の枯渇を背景とした新たな代替材の必要性から,非鉄金属スラグの再生砂としての利用が検討されている.実際,高速道路や一般道路での施工が試みられているが,アスコン用資材としての具体的な評価に対する調査事例は少ない.非鉄金属スラグは,一般的に産業廃棄物として扱われるため,非鉄金属スラグをアスコン細骨材として運用する際,一般的な細骨材よりも優れた性能を持たなければ,業界からの採用は難しい.そこで本研究では,非鉄金属スラグの中でも,我が国における建設資材として環境基準をすべて満たすフェロニッケルスラグ(Fe-Niスラグ)について着目し,Fe-Niスラグ細骨材によるアスコンの塑性流動抵抗性がどの程度向上するか確認することを目的とした.
既往の研究より,Fe-Niスラグは粒子形状に特徴があり,それは塑性流動抵抗性の向上に寄与することが定性的に知られている.このことから特徴的な粒子形状に留意した評価方法が必要であるという知見が得られている.そこで本研究では粒子形状が異なる二種類のFe-Niスラグ細骨材を使用し,その形状の差異を相対的かつ定量的に評価し,配合したアスファルトコンクリート(アスコン)の塑性流動抵抗性がどの程度向上するのか確認した.我が国では細骨材粒子形状に関する標準試験がアスファルト混合物の配合設計に導入されていないため,細骨材粒子形状の評価方法としては,米国SUPERPAVEの基準に採用されているFine Aggregate Angularity (FAA)試験を採用した.
本実験では,粒子形状が角張っているFe-Niスラグを配合したアスコンと丸いFe-Niスラグを配合したもの塑性流動抵抗性を比較した.試験結果より,角張っているものを配合したアスコンは塑性流動抵抗性が向上したが,丸いものは低下することが確認出来た.丸いものは配合割合が大きいと,我が国で使用されている天然砂を配合したアスコンよりも塑性流動抵抗性が劣った.さらにアスコンの基本物性としてひび割れ抵抗性の評価を行った.結果よりFe-Niスラグを使用したアスコンはひび割れ抵抗性が劣ることを確認した.(963文字)



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