古川 雄太

3層構造埋設ジョイントの変形性能とひび割れ抵抗性に関する研究

高橋 修

現在運用されている格子パネルを用いた伸縮分散型埋設ジョイントは,表層に密粒度アスコンを,基層にグースアスファルトと格子パネルの複合体を用いた2層構造である.施工延長が伸縮桁長によって設定されるため,長支間の連続高架橋では施工数量が多くなってしまう.発注者側の経済的ニーズから,耐久性を確保しつつ施工延長を短く抑えるために,埋設ジョイント舗装体を更に補強した3層構造の型式が開発された.この型式は,表層に改質アスファルトH型を使用した開粒度アスコン,基層に特殊添加材を使用した高ポリマー改質アスファルト混合物と格子パネルの複合体,そして表層と基層の間に改質アスファルトIII型を使用した密粒度アスコンの層を有している.
3層構造埋設ジョイントは,以前の型式と比べて構造が複雑で物性が大きく異なるアスコンを使用していることから,桁の伸縮作用に対する埋設ジョイント舗装体の変形性能が不明である.そのため,現行仕様のアスコン層の構成,施工延長が妥当であるか否か考察する必要がある.そこで本研究では,各構成層について温度とひずみ速度をパラメトリックに変化させた直接引張試験を行い,その応力とひずみの関係から緩和弾性率を求めた.そして,レオロジー分野で用いられる時間温度換算則を適用して,各層の緩和弾性率マスターカーブを作成し,低ひずみ速度域の3層構造埋設ジョイントのスティフネスを推定した.また,パネル複合層の実物大供試体による伸縮試験を行い,ひずみ分散性能についても確認した.これらの結果を比較して,埋設ジョイント舗装体のひび割れ抵抗性を評価するとともに,実施工に適した埋設ジョイントの施工延長について考察した.
 直接引張試験より,開粒度と密粒度のアスコン層の破壊時ひずみは,同一試験温度においてはひずみ速度の違いによる差異がないことを確認した.これより,実構造物における低ひずみ速度の条件でも,埋設ジョイント舗装体の破壊時ひずみは室内試験の結果と同程度と考えられる.また実物大供試体の伸縮試験より,3層構造埋設ジョイントの基層部ではひずみ分散が算定どおり発現していること,繰返し伸縮作用に対してもひずみ分散性能が損なわれないことを確認した.そして,各層の緩和弾性率に基づく埋設ジョイントのスティフネスから実構造物のひずみ値を推定し,埋設ジョイント舗装体の破壊時ひずみと比較することにより,現行仕様の施工延長はひび割れ抵抗性が十分であることを確認した.

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