佐藤 千鶴

高速道路の切削廃材を使用した瀝青安定処理路盤材の配合設計に関する研究

高橋 修

高速道路のアスファルト舗装には,基本的に再生アスファルト混合物(再生混合物)が使用されていない.長期的な耐久性が十分に確認されていないことから,本線以外の側道や付替道路に限定して運用されてきたにすぎない.しかしながら,甚大な被害を受けた中越地震および中越沖地震の本線復旧においては,地域の産業廃棄物処理施設が飽和状態となったことから,被災した路線に限定して,復旧工事で発生した表層の切削廃材を再生利用し基層と上層路盤に使用した.
東日本高速道路(株)は,中越地震から10年が経過した平成26年,復旧工事を行った本線に対してアスファルト舗装の追跡調査を実施した.その結果,路面性状に多少の差異は認められたものの,再生混合物を使用したことによる問題点は指摘されなかった.今後の高速道路では打換えを伴う維持修繕工事の増加が予想されることからも,アスファルト廃材を再生混合物として活用することを積極的に検討していく必要がある.
本研究では,震災復旧の緊急時には基本的検討が行われなかったことに鑑み,アスファルト廃材を安定処理路盤材に使用して上層路盤を構築する場合の基本物性を確認し,その妥当性を評価するとともに配合に関する留意事項について検討した.まず,県内高速道路からの切削廃材,および一般道路からの再生骨材を検討対象のアスファルト廃材とし,それぞれのアスファルトバインダの性状と付着量等からアスファルト廃材の品質を評価した.その結果,高速道路から発生した切削廃材は,一般の再生骨材に比べて密度が高く,針入度も高いことから良質な廃材であることがわかった.
 次に,廃材品質の違いが再生混合物に及ぼす影響と,復旧工事で使用した配合の妥当性を評価するため, 50%を中心に配合率を上下に変化させて配合設計を実施した.その結果,密度の高いアスファルト廃材を使用すると設計アスファルト量が減少し,新規に投入するアスファルト量も少なくなること,アスファルト廃材の配合率が50%を超えると,新規骨材の投入量が減るために粒度のバランスが崩れ,骨材粒度の基準を満たすことが難しくなることが判明した.
 最後に静的曲げ試験を実施し,破壊時ひずみの結果からひび割れ抵抗性の評価を行った.その結果,高速道路の切削廃材を使用する場合,配合率50%までは廃材に含まれる改質材の影響によって,ひび割れ抵抗性の低下を抑えることができた.しかし,配合率が50%を超えると,粒度バランスの不良や新規アスファルトの不足が影響して,ひび割れ抵抗性が低下する結果となった.

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