小林 龍平

応力緩和を考慮した直接引張試験による各種アスコンのひび割れ抵抗性評価に関する研究

高橋 修

アスファルトコンクリート(アスコン)の主な破損形態はひび割れである.アスコンのひび割れ抵抗性は,ひずみ速度が一定の曲げ試験や直接引張試験によって評価されている.しかしながら,実際の疲労ひび割れや温度ひび割れ,リフレクションクラックの発生プロセスでは,変形作用が交番したり,休止したりすることから,アスコンのひび割れ抵抗性には応力緩和が影響するものと考えられる.アスコンは条件によって応力緩和が極めて大きい材料であるため,ひび割れ抵抗性への影響もかなり大きいと予想される.また,わが国ではアスコンのバインダにストレートアスファルト(ストアス)に加えて各種のポリマー改質アスファルト(改質アス)が運用されていることから,アスコンのひび割れ抵抗性を適正に評価するためには,これらバインダの違いに基づく応力緩和の差異を考慮して考察する必要がある.
本研究では,各種バインダを使用したアスコンのひび割れ抵抗性を応力緩和の差異に着目して評価することを目的に,変形過程の異なる2種類の直接引張試験を実施して検討を行った.一つは,ひずみ速度を一定に供試体が破断するまで一様に引き伸ばす既往の直接引張試験であり,もう一つは,定速度直接引張試験の変形過程において一定の変形割合で休止時間を設け,段階的に供試体を引き伸ばす引張試験である.ここでは,温度ひび割れやリフレクションクラックを想定したひずみ速度の遅い条件とし,常温域(25℃±10℃)で上記2つの試験を実施して,応力の変化に着目しながら破壊に至るまでのひずみ値を比較した.供試体としては,ストアス,および性能が異なる4種類の改質アスを使用した密粒度アスコンを用意し,さらに骨材最大粒径を変えたものも加えた.そして,2種類の直接引張試験の結果をそれぞれ比較することにより,応力緩和の違いと破壊時ひずみの関係に着目して考察した.
以上の検討より,応力緩和を伴う休止時間はアスコンの破壊時ひずみを大きくさせる傾向があることを確認した.ただし,応力緩和によってアスコンの破壊時ひずみが大きくなる程度はバインダの種類や最大骨材粒径によって異なる.破壊時ひずみが大きくなる程度はバインダの粘度と粘結力がかなり影響しており,応力緩和が大きいからといって破壊時ひずみは大きくならない.また,同じバインダを使用しても最大骨材粒径が異なる場合,骨材表面積の大小によってバインダが骨材を把握する性能が異なり,破壊時ひずみが変化するものと考えられる.

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