増子翔太

都道府県立自然公園の再編に関する研究

中出文平、松川 寿也、樋口 秀

自然公園法は制度発足から50年以上が経過し、都市化の進行、道路等の基盤整備の進展、その他の保護地域の指定など、指定当初と比べ、取り巻く諸条件は大きく変化している。そうしたなか、和歌山県は、取り巻く状況の変化を踏まえ、県全域をゼロベースで再評価するため、県全域を対象に県立自然公園の抜本的な見直しを行い、自然保護と適正な利用が両立した新たな時代にふさわしい県立自然公園の実現を目指した。これまで自然公園は、全国的に自然公園単体で見直されてきたが、県全域を対象とした和歌山のような事例は全国でも例がない。そこで本研究では、本事例(和歌山県立自然公園の抜本的見直し事業)をケーススタディとして、公園の実態を明らかにする。そして、県全域を対象とした自然公園における見直しを他県で実行する際の課題や可能性を考察する。
研究方法は地理情報システムを用いて自然公園地域の拡大・後退および地種の強化・緩和がおこなわれた地域、他の土地利用規制が一切かからなくなる地域の抽出をした。ここで得られた知見と和歌山県より頂いた協議録の全てを照らし合わせることで、見直しの経緯を既地的に把握していく。
本研究では対象となる14公園1地区を議論の難航度合いと、要望の達成度合いから、県との大きな意見の相違があり、最終的には市町村および住民の要望が実現しなかったものを『議論難航未達成型』、県との大きな意見の相違があり、最終的には市町村および住民の要望が実現したものを『議論難航達成型』、そして県との多少の調整がありながらも大きな意見の相違が無い、もしくは関係市町村からの意見が全く無いものを『議論円滑型』として3分類した。
上記の3つの分類を分析した結果、議論が難航する理由として「県が基準の一貫性を求めるあまり、資質の低い地域(集落部)まで特別地域を指定しようとした」ことや「すでに他の規制制度(和歌山県景観条例など)によって保全体制が整っており、指定により保全制度が重複する」ことなどが大きな論点であることが明らかになった。一方で議論が難航しなかった理由として「市町村からの意見が特になく、県の方針に従うのみだった」ことや「資質の低下が明らかであった」こと「すでに指定地に保安林の指定がかかっている」ことなどが明らかになった。これらの知見も含め見直し事業全体から得られた課題を、『大規模な現地調査、保護・資質、県と関係各所、期間、運営・管理・利用、規制内容の周知・理解不十分、地権者、区域指定、県の把握不足、他法令との関係』の10の課題として整理し、それぞれの解決策を提言した。(1082文字)

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