西村 拓也

景観法と連携した自然公園法の許可基準の運用に関する研究

中出文平 樋口秀 松川寿也

平成16年に景観法が成立したことを受けて、多くの地方公共団体が景観行政団体に移行し、景観形成に関する取り組みを推進している。景観法の特徴は、都市部だけでなく、農村部、自然公園等も対象としており、従来の国土利用計画法に基づく5地域区分の枠にとらわれない土地利用規制ができることである。景観法第8条第2項第4号ホの規定による自然公園法の特例の基準は、自然公園法の許可基準に対して景観計画で上乗せの基準を定めることができるものである(以下、上乗せ基準)。しかし、この自然公園法の上乗せ基準を規定した景観行政団体の実態は、規定状況も含めて全く把握されていない状態である。
そこで本研究では、この景観法による上乗せ基準の運用実態を把握するとともに、本制度の活用法を提示することで、自然公園法の土地利用制御手法の一つとして自然公園法と景観法の連携のあり方を提言することを目的とする。
本研究では、全国の景観行政団体の上乗せ基準の規定状況を整理するとともに、自然公園特別地域の指定状況等と合わせて分類した。上乗せ基準を未規定の景観行政団体に対しては、上乗せ基準を規定していない理由等の「自然公園法と連携した景観計画の策定」に関してアンケート調査を実施した。これにより、上乗せ基準を規定していない理由として、多くの景観行政団体は自然公園法の規制基準で十分対応できると判断していることがわかった。同時に、国立・国定公園特別地域を広く有する景観行政団体での景観行政と自然公園行政の連携の希薄さが判明した。
また、上乗せ基準を規定している景観行政団体を詳細調査対象として、上乗せ基準を規定した理由及び上乗せ基準の運用実態を調査した。その結果、全5事例のうち中之条町の事例は実際には上乗せ基準として運用されていない事例であることが、3事例では上乗せ基準を適用しているがその効果が表れていないことが判明した(石川県珠洲市の事例は上乗せ基準の運用期間が短いため)。また、全5事例のうち3事例(中之条町の事例を含む)は自然公園担当者との協議が行われていないことが判明した。
調査結果から抽出した課題は、連携体制が構築できていないことで自然公園行政に関する知識及び関心が少なく、必要性が認識されていないこと、上乗せ基準の規定効果が得られない地域に対して適用されていることである。
制度運用の提言は、景観計画策定の際に自然公園担当者との意見交換の機会を設けることで、自然公園行政の現状について把握すること、上乗せ基準の規定に係る指針の作成により、各景観行政団体が活用しやすいようにすることが望まれる。

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