加藤 湧亮

中心市街地に立地する公営駐車場の利用実態とその活用に関する研究

樋口 秀 中出 文平 松川 寿也

中心市街地の活性化を目指す地方都市の多くは、来街者の増加を目標としている。さらに、その来街手段は、公共交通に主眼がおかれている。しかし、自動車に過度に依存した地方都市では、公共交通の充実と同時に自動車利用に配慮しなければ、来街者の増加は達成できないと思われる。
そこで、本研究は、自動車での来街を助ける駐車場の中で、行政による政策で対応可能な公営駐車場に着目し、その全国的な利用実態および行政の活用意向を明らかにすること、その上で、中心市街地活性化状況や駐車場活用施策を調査・分析し、利用実態の差異となる要因を見出すこと、そして、中心市街地活性化に寄与するような公営駐車場の活用策を提言することを目的とする。
まず、中心市街地活性化基本計画認定都市119市を対象に、調査した結果、公営駐車場の利用実態は、回転率、利用率の両面で非常に低いことが明らかになった。しかし、行政の多くは、その活用が中心市街地活性化につながる可能性を強く認識していた。
そのため、その活用施策を検討する必要があると考え、利用実態に特徴のある5市を選定した。
公営駐車場の利用実態が相対的に高い長岡市、飯田市、豊橋市の3市は、大型店に加えて、現在でも商店街が中心市街地の商業核となっており、中心市街地への来街目的となっている。また、近年の歩行者通行量は、3市全てで減少から、増加に転じていた。一方で、利用実態が低い土浦市と上田市の2市は、商業施設そのものは一定数存在するが、空店舗や空地が多くみられ、歩行者通行量も依然として減少傾向にあった。
利用実態が高い都市では、施設開業と連動して、利用料金値下げや条件なしの駐車無料時間を導入するなど、非常に大きな利便性を創出する施策が複数実施されていた。また、駐車場自体が、商店街の地下に立地するなど、アクセスが良好であった。一方で、利用実態が低い都市の施策は、施設開業とは直接連動しておらず、また、その対象を一部の施設利用者に限定している。さらに、土浦市では、立体の駐車場が施設や商店街から離れており、利便性が低かった。以上から、公営駐車場の利用実態には、中心市街地活性化状況に加え、駐車場施策の実施形態が大きく影響している可能性が見出せた。施策実施では、駐車場の建設費などを考慮する必要がある。調査の結果、設置から20年以上経過したものが多く、現時点で、そのほとんどが、償還が完了していることから、施策実施のハードルは高くない。
今後の中心市街地活性化に向けて、施設利用などの条件を付けない一定の駐車無料時間の導入を提案した。中心市街地内部の魅力向上と同時に、施策の積極的な実施が必要である。

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