加藤 雅人

市町村の国土利用計画と都市計画マスタープランの関係性に関する研究

中出 文平 樋口 秀 松川寿也

現在、市町村の合併が一段楽した。市町村の都市計画として「都市計画マスタープラン(以下、都市マス)」や「国土利用計画における市町村計画(以下、市町村計画)」が取り組まれているところもあるが、市町村合併による市域拡大がこれらの都市計画の影響範囲を大きく逸脱してしまうこともある。本研究では都市マスと市町村計画を策定している市町村から、それぞれの計画の特徴や、使用方法の違いに関する知見を得ること及び両計画の有効活用について提言することを目的とする。
 本研究では都市マス及び市町村計画を現在も策定している37市を対象とする。37市町村について人口規模と行政域に対する都市計画区域の割合で類型化し、類型化したカテゴリの中から1都市ずつ詳細対象都市を選定する。その後、詳細対象都市にヒアリング調査等を実施し、都市マス及び市町村計画の活用の実態を調査する。そこで得られた知見から全国的にも共通する項目であるかどうかを調査するため、詳細対象都市以外の対象都市31市に対し、アンケート調査を行い、全国的な都市マスと市町村計画の運用実態を把握し、得られた知見より、現状の課題等を考察する。
 詳細対象都市へのヒアリング調査と対象都市に対するアンケート調査によって、明らかになった事項を以下に示す。
・都市マスと市町村計画では具体的な土地利用の施策について示すことのできる都市マスが、近年重要視されている。
・非線引き都市に関しては用途地域外に関して開発を防ぐ手段が少なく、新規開発地の部分を示す場合が線引き都市と比較して多いことから、市町村計画が活用されているが、線引き都市の中でも市街化調整区域に対しての開発方針や農業・森林等の土地利用を総括して示すことについて活用される部分がある。
・都市マスと市町村計画の差別化として、都市マスは計画内で行政域全域を対象とすると定義していても都市計画区域内の土地利用、特に線引き都市であれば市街化区域内、非線引き都市であれば用途地域内に限定され、市街化調整区域・用途地域外・都市計画区域外に関しては個別計画・施策の根拠としては用いられることは少ない。
以上から、都市マスが現在の社会情勢に適した計画であり、市町村計画の形骸化が進んでいる状況となっていることが懸念されるが、市町村計画が今後活用されるためには各計画体系の戦略的な構築が必要になるだろう。形骸化が進んでいる現在でも活用の幅はあり、地方都市においては、農業地域や森林地域等の部分について総括した将来像が必ず必要となる。そのため、各計画の役割を意識した計画策定が望まれる。

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