石山 慧

長岡の雁木通りの現状分析と今後のあり方

樋口 秀 中出文平 松川寿也

我が国では、人口減少社会に入り「都市のコンパクト化」・「歩いて暮らせるまちづくり」が提唱されている。一方、雪国に見られる雁木通りは積雪時に通路を確保できるのみならず雨や日差しから歩行者を保護し、安全な歩行空間を提供する貴重な都市施設とも考えられる。長岡に現在立地する雁木の大半は、戦災の影響でほとんどの雁木が失われた後に公有地の歩道上に特例として再建されたものであるが、全国で2番目の雁木延長を誇ると言われている。しかし、現状では雁木通りは断続し本来の機能を十分に果たせていない。
そこで、本研究は本来の雁木通りとは異なり大半が公有地の歩道上に立地する長岡の雁木通りを調査・分析し、現在の雁木の状況を確認すること、雁木の所有者や歩行者の雁木に対する意向を調査し、雁木通りの保全・活用の可能性を探るとともに、雁木通りの今後のあり方を検討することを目的とする。
まずGoogleマップのストリートビューを用いて道路を閲覧し、雁木が設置された場所を確認したところ、雁木は1320棟あり、その総延長は10,959mであった。次に雁木通りを設定し、それぞれで算出した雁木設置率を基に連続性の高い雁木通り84本(雁木総数833棟、雁木総設置率51.6%)を保全・活用の可能性がある通りとして抽出した。さらに、雁木・家屋の立地や老朽状態・構造、用途を調査した。その結果、雁木が設置されていない敷地では駐車場や空き地などの低未利用地が多く、それによる途切れも多々見られた。雁木が残存する箇所も木造雁木・家屋、老朽雁木・家屋が所々に見られ、半数以上の雁木が近い将来消失する危険性が高いことが確認された。また、雁木通りの居住者(持家)、雁木通りに面する低未利用地の所有者、雁木通りの歩行者の三者に対してアンケート調査を実施し、意向を確認した。三者とも現状の形での雁木通りの維持・保全を望む者が多く、雁木通りは重要で必要という認識であった。しかし実際の整備に関しては、建設時の自己負担、年齢・後継者の有無による維持・管理の難しさから、雁木を所有する居住者は半数近くが改築に後ろ向きで、雁木を所有しない居住者や低未利用地の所有者の多くは行政による対応を望んでいた。現状では断続箇所の回復どころか現状の維持さえも困難である。
現状を踏まえると、雁木通りは今後さらに減少すると推測された。しかし、通りによっては雁木の改築が確認でき、対応次第で雁木通りの存続が期待できる。そこで、駅前アーケードとの接続や連続性から必要な雁木通りに限定し、行政には補助金の増額や雪降しの支援、雁木設置基準の緩和が望まれる。また、住民には町内会での話し合いや雁木の歴史・文化の周知など人々の関心を誘う取り組みが必要である。

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