氏名:小池拓也

スマートフォンアプリを用いた路面舗装状態の簡易計測の可能性

指導教員名:佐野可寸志・西内裕晶

近年,我が国では,高度経済成長期に建設された道路インフラの老朽化に伴い,メンテナンスが急務となっている.また,我が国の一般道路の実延長と舗装率(簡易舗装を除く)は年々上昇傾向にあり,道路の管理瑕疵による事故件数が増加している.そこで,路面舗装状態を簡易的に把握するため,スマートフォンアプリ段差ナビBumpRecorderを用いる.既往研究では天候等の計測環境における検証はなされていない.実際に路面舗装状態を調査する際,使用する車種や天候等の計測環境は様々である.そこで,本研究では走行速度,端末の設置箇所,タイヤの種類,3つを分析対象とし,これらが計測値へ与える影響を明らかにすることを目的とする.また,路面舗装状態を把握するには段差の真値が必要なため,計測誤差を真値へ補正する方法を提案する.まず,走行速度を40,45,50,55km/hの4パターンで計測した.計測結果より,走行速度が15km/h増加すると計測結果も約3mm増加し,走行速度と段差計測値には比例の関係があることが分かった.ここで,走行速度による誤差が確認されたため補正方法を提案した.様々な走行速度で計測した結果,走行速度40km/hが最も段差の真値を計測できたため,段差計測値を走行速度40km/hに置き換える形で補正することとした.10個の段差を実測調査した値と各段差の計測値の補正値を比較した所,全ての段差で補正効果が確認された.次に,携帯端末をダッシュボード上の左側,中央,右側の三ヶ所に設置し,端末設置位置による影響を調べた.その結果,タイヤから最も離れている中央の端末は常に左右のタイヤの計測値の影響を受けるため,正確に路面状態を把握できていなかった.また,本計測区間には計測開始地点から400m付近まで左側にマンホールが設置されていた.左右の計測結果を比較すると,400m付近までは計測値が一致してなく,400mを通過すると左右の計測値が一致するようになった.このことからタイヤ上であれば左右どちらでも精度よく段差情報を計測可能である.最後に,タイヤの種類の変化による影響を調べた.まず両タイヤの違いとして,ノーマルタイヤと比べてスタッドレスタイヤは用いているゴム素材が柔らかいことが挙げられる.両タイヤの計測データ数を比較すると3cm未満の段差においてスタッドレスタイヤの方が少ない.原因としてはスタッドレスタイヤのゴム素材が柔らかいため段差の振動を吸収してしまい,正確な段差情報を計測できなかったことが考えられる.以上のことから走行速度と段差計測値には比例の関係があり,走行速度40km/hに置き換えることで段差真値への補正が可能であった.また計測環境として,端末の設置位置はタイヤ上が精度良く計測でき,タイヤの種類はノーマルタイヤが望ましいことが分かった.

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