岸田昂大

事故発生リスク情報が運転者の経路選択行動に与える影響とその便益評価

佐野可寸志 西内裕晶

交通事故の死亡事故(24時間以内)は減少傾向にあるが,交通事故による渋滞,人身,ものなどへの損失は社会的・経済的に大きな損失である.近年の交通事故対策としては財政面での制約から,高額な費用のかかる道路整備をはじめとしたハード面での対策が困難になりつつある.そこで,費用が比較的かからない対策として,道路掲示板による交通状況の情報提供などのソフト面での対策に注目が集めっている.また,情報提供よる交通事故対策として事故発生リスク情報の提供による交通事故対策も考えられているが,その効果測定まではなされていない.
本研究では,対象道路の事故発生リスクの把握,事故発生リスク情報の提示が運転者の経路選択行動に与える影響を調べるアンケート調査,アンケート結果から経路選択ロジットモデルの構築,事故発生リスク情報提示の運転者への便益の算定・評価を実施した.
対象道路の事故発生リスの把握では,バイパスと高速道路ではバイパスの方が高速道路よりも9倍危険であることが計算結果より分かった.アンケート調査は経路選択行動が異なると考えられる一般住民と事業所に実施し,一般住民では高速道路料金を重視し事業所では所要時間を重要視する傾向が見られた.どちらの場合も事故発生リスク情報の提示による高速道路への経路選択誘導は可能であることがわかった.アンケート結果をもとに経路選択ロジットモデルを構築した.構築したモデルでは,高速道路料金,事故発生リスク,所要時間の政策変数に加え,高速道路利用頻度や職業,事業者の規模,輸送距離における変数を個人属性として加味した.一般住民,事業所ともにモデルの整合性を表す尤度比は妥当な値となり,全てのパラメータにおいて符号条件で正しい解釈が出来る結果となった.便益の算定・評価では,事故発生リスク情報の提供によって1億円/年の便益があることが算出結果より分かった.実際に運用する場合には既存の交通情報掲示板を用いればデータベースの構築,整備費,運用費用が費用として考えられ通常のハード面での整備に比べ費用が抑えられることが出来,事故発生リスク情報の提供による交通事故対策は費用対効果が高いと考えられる.

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