南 亮太朗

三条市乗合タクシーの利用者実態と乗合推進施策の評価

佐野 可寸志,西内 裕晶

近年、人口減少や高齢化社会、バス事業の規制緩和を背景に地方では採算が合わないようなバス路線が廃止、減便される等、高齢者や運転免許を持たない人々の移動手段の消失による外出行動の制限が生じている。その対策として、住民の利用予約に応じて運行するデマンド交通の導入事例が増加しており、利用者の外出頻度の増加等、地域の交通利便性の向上に貢献している。新潟県三条市でも、デマンド型乗合タクシー「ひめさゆり」(以下「ひめさゆり」と記述)を導入した。
 「ひめさゆり」の導入により、利用者の外出頻度の増加等の効果が得られた。しかし、「ひめさゆり」は、1人での利用者が多く、三条市ではタクシーが1台運行する度に事業者に運行経費を支払っているため、市の行政負担額が増加している。そのため、今後持続可能なサービスを提供するためには、乗合利用者の増加が必要不可欠である。そこで、本研究では、まず、利用者の乗合に対する意識に着目し知らない人との乗合をすることにおいて抵抗を感じる要因を明らかにし、その結果を基に利用者が実際に乗合をする際に最も重要視する点を選択型コンジョイント分析により明らかにする。また、乗合利用者の増加による行政負担額の変化の検証を行う。
 「ひめさゆり」利用者は知らない人同士で乗合をすること自体に抵抗がある利用者は少ないが、予約した出発時刻が前後することに関しては否定的であり、女性は異性との乗合に抵抗がある利用者が多いことがわかった。また、複数運賃の値下げによって、多くの利用者が知り合いや知らない人との乗合に肯定的であることがわかった。また、選択型コンジョイント分析の結果、知らない人との乗合をすることにおいて、男性は乗合する際の運賃や出発時刻を、女性は同乗する利用者の性別を重要視していることがわかった。
 乗合利用者の増加による行政負担額の変化の検証では、乗合利用者の増加によって行政負担額の減少が確認できたが、事業者負担額は減少した。
以上のことから、今後は、「ひめさゆり」の出発地としてよく利用されている病院や買い物施設等で乗合を呼びかけ合う機会が必要であること、利用者にある程度の時間の前後の許容や「異性との乗合でも良いか?」等と問うような取り組みが必要であるが、事業者側の視点では、乗合利用者の増加は収入が減るだけなので、利用者同士が乗合で利用をした場合には1人で利用した際の運行経費を超えない程度にタクシー事業者に支払う行政負担金を上げる等のインセンティブが必要不可欠である。

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