高橋広基
高速道路整備に伴う立地の変化を考慮した貨物車OD交通量の推定と交通施策評価
佐野可寸志 西内裕晶
国土交通省は都心における渋滞緩和のために,3環状9放射のネットワークを推進しており,多くの企業が圏央道周辺に事業所を新設・移転している.三環状線完成後では,更なる圏央道沿いへの企業の立地が進むと考えられる.企業の立地の変化により,そこを出発地・目的地とする貨物車のOD交通量が変化すると考えられる.しかしながら,現在の三環状線の渋滞等の評価に用いられるODデータで道路交通センサスの調査結果をベースとしたODデータである.そのため,三環状線整備後の企業の立地及び貨物車のOD交通量の変化を考慮できていない.
そこで本研究の目的は,整備が進められている三環状整備後の立地の変化を考慮した時間帯別貨物車OD交通量の推定とそれを交通シミュレーションの入力データとして,三環状線整備後のネットワークで交通状況を再現し,渋滞箇所の特定や貨物車の出発時刻変更施策を導入し,渋滞への影響及び貨物車の輸送時間の変化について評価することである.
研究方法は三環状線整備後の時間帯別貨物車OD交通量の推定するために平成22年度道路交通センサスの調査結果と平成22年度工業統計,平成19年度商業統計を用いて,企業の出荷額に着目して時間帯別貨物車OD交通量を把握した.三環状線整備後の企業の立地状況を把握するため,三環状線整備後のメッシュデータより得られた立地ポテンシャルをもとに出荷額を推計した.ここで得られた出荷額をもとに時間帯別貨物車OD交通量を推計した.この時間帯別貨物車OD交通量の発生・集中先は圏央道沿線において増加が確認された.
この時間帯別貨物車OD交通量を入力データとして,交通シミュレーションによって交通状況を再現した.都心から神奈川にかけてと道路網の少ない千葉県千葉市から都心部への大渋滞が発生していた.
この交通状況に対して貨物車の出発時刻変更施策を導入し,渋滞への影響及び貨物車の輸送時間の変化について評価した.施策の内容は,通勤,帰宅時間帯(7時,17時)と11時の3つの時間帯において出発時刻を1時間遅らせるものである.結果として,3つの全て時間帯において出発時時刻を変更した場合には,900時間の総旅行時間の削減がされていた.施策導入前と比較すると16時以降から渋滞箇所が減少することが分かった.
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