古寺俊祐

高齢者を対象とした啓発活動による危険意識と行動変化に関する研究

佐野可寸志 西内裕晶

近年,高齢化を背景に高齢者が関与する交通事故の割合は増加している.それに伴い,高齢ドライバーの交通安全講習の実施が必要とされている.しかし,高齢者はコミュニティーが限定されているため高頻度の講習実施が難しく,より効果的な講習を実施する必要がある.そうした中で,既往研究は交通安全講習前後に意識調査を実施することで講習効果を評価した研究は行われている.しかし,講習手法によって与える効果は同じとは限らない.また,講習効果が実際の運転に与える影響は明らかにされていない.よって,本研究では複数手法による講習を行い,その前後による意識調査と運転行動の実態調査を評価し,最も効果のある講習を明らかにする.対象地域は平成16〜24年度の交通事故データにより,長岡市で高齢者事故が多発している宮内地域を選定し,交通安全講習を実施する.講習前後と講習20日後の全3回の意識調査を実施し,効果的な手法,講習効果の変化を明らかにする.併せて,スマートフォンアプリ「Bump Recorder」を使用し,運転時の加減速度変化を抽出,分析することで,講習効果が実際の運転に与える影響を明らかにする.これらにより,講習効果により高齢者の意識構造がどのように変化しているか,実際に運転が改善された高齢者はどのような特性があるかを明らかにする.また,講習効果の評価から交通安全講習の改善策を提案する.実施した講習手法は“警察官による講話”,“交通安全DVD視聴”,“ワークショップ”であったが,受講者の受講意欲,講習満足度で手法による差は見受けられない.また,受講者に比べ非受講者の講習に対しての関心度は低いため,講習参加へ繋がらないと考えられる.講習前後で明らかに運転変化があった高齢者で減速度が緩やかになったのは両地域で減速度が8名,加速度が5名となり,講習20日後にかけて事故で当事者(加害者・被害者)となる不安が低下し,ウィンカーを直前に出す頻度が低下した高齢者ほど運転時の速度変化が緩やかに改善される傾向があると考えられる.その他,受講者は非受講者よりも全体として危険意識の不安度が強い.また,受講者は講習前よりも講習直後,講習20日後と徐々に運転時の不安が具体化される傾向がある.運転行動について受講者よりも非受講者のほうが運転行動の順守認識が強い.受講者では講習前と講習20日後で認識構造が変化していた.

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