氏名:荒井 啓佑

論文題目:CO2分離のための新規アルミニウム含有DDR型ゼオライト膜の開発

指導教員名:姫野 修司、小松 俊哉

 地球温暖化問題を背景として、世界的に温室効果ガスの削減に向けた取り組みがなされており、日本国内においても、今後大幅な二酸化炭素(CO2)の削減や再生可能エネルギーの利用拡大が必須となる。その中で、再生可能エネルギーの一つであるバイオガスや化石燃料の中でもCO2排出量の少ない天然ガスが注目されているが、これらのガスにはエネルギー価値の高いメタン(CH4)とともに熱量を有さないCO2が多く含まれており、このCO2を除去する工程が必要となる。
 本研究室ではこれまで、CO2混合ガスから選択的にCO2を分離可能なDDR型ゼオライト膜を用いた膜分離法によるCO2分離技術の開発を行ってきたが、CO2分離回収技術の促進のためには、さらなる高性能なCO2分離膜の開発が必要となっている。また,本研究室では,DDR型ゼオライトの中でも,骨格構造全てがシリカで形成されていることから,耐圧・耐熱性に優れるDD3Rに注目して研究を行ってきた.そこで、膜素材であるDDR型ゼオライトの中でも、構造骨格中にアルミニウム(以下、Al)を含有することで、イオン交換による細孔径調整や、骨格中に存在する負電荷の影響による吸着能の変化などにより、DD3Rよりも高いCO2分離性能を発現する可能性のあるZSM-58の膜化技術の開発を目的とした。これまでのDDR型ゼオライトの研究から、気体分離膜には膜支持体上に5μm程度の膜層で覆う必要があることが明らかとなっているが、ZSM-58を支持体上に合成すると、50~100μm以上の膜層が合成され、分離膜としての性能を発現しないことが問題となっている。
本研究では、合成する際の温度・時間、支持体上にあらかじめ塗布する一次粒子量、原料溶液の組成・濃度を中心に支持体上にZSM-58を薄く合成する薄膜化の検討を行った。その結果、結晶合成では,アルミニウム含有量が多い程,合成にエネルギーがかかり,構造規定剤が除去されにくくなることを明らかとした.膜合成では,原料溶液中に0.2μmに粉砕したZSM-58を一次粒子として添加し、24時間・160℃の条件で水熱合成を行うことで、膜層15μm程度のZSM-58膜が合成されることが明らかとなった。また、温度・時間の関係から,膜表面に合成される結晶粒径と膜厚を制御可能であることが示唆された.さらに,原料溶液中の構造規定剤量とシリカ量の関係から、ZSM-58ゼオライトの形状を制御し,膜層を薄くできる可能性のある点と膜支持体上に合成される結晶がZSM-58では無くなる点が存在することを明らかとした。以上より,分離膜の開発に必要な結晶合成および焼成による構造規定剤除去と膜支持体上への物理的な結晶の積層までの各合成条件との関係性を明らかとした.

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