竹田悠人

有機性廃棄物とBDF製造時に副生される廃グリセリンの混合メタン発酵技術に関する研究

小松俊哉、姫野修司

近年、温室効果ガス排出削減の観点からバイオ燃料の利用が促進されている。また、バイオ燃料は化石燃料の存在量が少ない地域でも調達可能な事から、軽油の代替燃料となるバイオディーゼル燃料(BDF)が注目されている。BDFは一般的には、実用化の面からほとんどがアルカリ触媒法で製造されている。しかし、BDF製造量に対して約15〜20%の高アルカリ性グリセリン廃液(廃グリセリン)が副生され、現在は、主に廃棄物として扱われ新規利活用方法が求められている。廃グリセリンは腐敗しにくい、貯蔵性・運搬性が良い、有機物を高濃度に含む等の特徴を有しており炭素源として嫌気性消化による有効利用が注目されている。そこで本研究では、下水汚泥や生ごみ等、有機性廃棄物の減量化やエネルギー回収に適用されている嫌気性消化法に着目して有機性廃棄物との混合消化に焦点をおき、廃グリセリンの処分費削減及び消化ガス増産による廃グリセリンの更なるエネルギー回収技術開発を目的として、廃グリセリンが嫌気性消化に与える影響等を検討した。
廃グリセリンの混合消化は、下水汚泥と生ごみを対象として行い、下水汚泥は学内連続実験により下水汚泥投入量に対して廃グリセリンを4.0%投入までの条件において安定した運転が確認された。また、VS負荷では最大で約2.10kg-VS/m3・日(下水汚泥単独系の約2倍の負荷量)でVS当たりのガス発生量は約1200mL/g-VS、分解率(VS分解率、メタン転換率:約100%)等から投入した廃グリセリンがほぼ全量分解したことを確認した。学内連続実験よりパイロットスケール実証実験で実設備を想定した廃グリセリンの消化特性を把握した。投入した廃グリセリンはほぼ全量の分解を廃グリセリン1.0%投入までで把握し、学内連続実験と同等の結果を得た。
次いで、生ごみと廃グリセリンの混合消化を学内連続実験で行った。はじめに、生ごみ投入量に対して廃グリセリンを2.0〜3.0%で運転を行った結果、運転開始86日目以降に廃グリセリン投入系でpHの低下及びVFA蓄積による酸敗で運転を停止した。要因として、微量金属の欠乏が示唆されたため、使用基質の微量金属含有量を分析した結果、生ごみは下水汚泥と比較してFeは100分の1以下、Niは3mg/kg-TS(下水汚泥:23mg/kg-TS)、Coは3mg/kg-TS未満(下水汚泥:5mg/kg-TS)であり微量金属含有量が少なかった。そのため、微量金属の添加を行い、生ごみと廃グリセリンの連続実験を行った結果、微量金属の添加しない実験と比較して高いVS負荷量(廃グリセリン2.0%投入系で最大約3.50kg-VS/m3・日)においても安定した運転(VS分解率:約90%、VS当たりの正味のガス発生量:約1200mL/g-VS)が確認された。それにより、生ごみと廃グリセリンの混合消化では、微量金属の添加、又は下水汚泥等の微量金属含有量の多いバイオマスも同時に投入して運転する必要性が考えられた。
以上より廃グリセリンは、下水汚泥、生ごみ等の消化槽を有する施設で混合消化を行うことで処分費の削減とC/N比改善等による高い分解性と消化ガスの増産が見込まれ、メタン発酵において有用なバイオマスであることを明らかにした。

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