山口 翔太

地上観測による水稲生育時の分光情報と衛星観測情報との照合に関する検討

力丸 厚 坂田 健太 高橋 一義

現地で行う生育調査は水稲の細部まで調査が可能であるため、生育初期における生育診断に有効である。しかし、調査に時間がかかり、広範囲に分布している水田の全圃場を診断する事は困難であるという問題点がある。そのため、広範囲の情報が取得できる衛星リモートセンシング技術を利用した生育情報の把握が注目されている。また、その基礎段階として、地上観測情報と衛星観測情報の関係を把握する必要がある。
本研究では、水稲生育時にハイパースペクトルカメラを用いて水稲分光情報とLandsat7衛星、Landsat8衛星に搭載されているETM+、OLIセンサから衛星観測情報の取得を行った。しかし、衛星観測情報では、1画素の中には、水稲のみではなく、土壌や圃場内に水がある場合には、その水や土壌の分光反射が混合しているミクセル状態になっている。そのため、地上観測と衛星観測では観測される分光情報に差が生じる。そこで、植生比率である植被率を算出した。地上観測による水稲分光情報に植被率を考慮する事により、衛星観測情報との照合を行うことを目指した。地上観測による水稲分光情報と衛星観測情報との関係を明らかにするため、水稲の地上観測分光情報と衛星観測情報の照合を行うことを目的とした。
本研究では、水稲の赤域と近赤外の変化の特徴に着目し、近赤外と赤域の差分である植生指標DVI(Difference Vegetation Index)を使用した。生育初期において、地上観測による水稲のDVIに植被率をかけ合わせた推定圃場DVIと衛星観測DVIはおおむね同じ変化傾向を示すことが分かった。生育後期では、出穂、登熟など水稲の質的な変化を衛星観測では細密に判断できず、推定圃場DVIと衛星観測DVIとの差が大きくなる。また、生育初期における推定圃場DVIと水稲の草丈、茎数と高い相関が見られた。また、生育初期での推定圃場DVIと草丈のグラフより求めた回帰直線の式を用いて、衛星観測DVIより草丈の推定を行った。草丈の実測値27.2cmに対し、推定値は31.9cmと近似した値を算出することができた。これらのことから、衛星観測情報を用いて生育初期における水稲の生育状態を広範囲に把握できる可能性が示唆された。

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