林 真那

波形記録式航空機LiDARデータの反射強度を用いた樹冠密度分布把握手法の検討

高橋 一義、力丸 厚

保安林整備や森林経営計画での間伐の基準には、樹冠粗密分布が用いられることが多い。これは対象地域の面積とその内部の樹冠の投影面積の比をとったもので、樹冠内部の状況は無視される。森林管理のためには樹木単体の葉面状況を反映する指標を用いることが望ましい。本研究では、波形記録式航空機LiDARデータを用いた、樹冠内部全体での葉面積密度の分布を表す樹冠密度分布の把握手法について検討した。
樹冠密度分布とは、単位面積に占める葉や幹の地表投影面積を表し、樹冠内部の鬱閉状況を示す指標である。本研究で用いた航空機LiDARは、樹冠内部の状況を反映したデータが取得しやすい。また反射点ごとに反射強度が記録されており、これが反射面の面積を反映すると考えた。
葉面積を反映する指標として、UAV空撮を用いて作成した3D点群データから単位面積当たりの葉面積を表す葉面積率を算出し、LiDARデータの反射強度との比較を行った結果、相関係数は0.6であった。相関の全く見られなかった樹木を航空写真にて確認すると、同樹種の相関の高かった樹木とは葉面状況が異なっていることが確認された。この樹種を除いた場合の相関係数は0.8となり、葉面積率と反射強度は高い相関を示したため、LiDARデータの反射強度は葉面積を反映すると思われる。
同じ樹木であれば葉面の反射率は同一とし、レーザ経路上の反射点は全て同じ反射率・同じ樹木の葉面での反射点であると仮定し、レーザ経路上の反射点の反射強度の総和に占める対象反射点の反射強度の割合(反射面占有率)を求めた。その結果、葉面積率との相関計数は反射強度平均値よりも高くなり、0.7であった。なお、前述の相関の見られなかった樹種を除いた場合の相関係数は0.9であった。
反射点には、樹冠での反射点以外に地面での反射点も含まれている。地面は葉面よりも反射率が高くなる傾向にあるため、地表付近の反射点と樹冠で反射したと思われる反射点を反射点の高さを基準に分離して解析を行った。樹冠がそれほど繁茂せず、地面の標高が正しく取得できている箇所では、葉面積率との相関は地面の反射率を考慮しない場合よりも高くなった。
本研究では、反射強度を用いて算出した反射面占有率が葉面積を反映する指標として有効であることが示唆された。

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