野崎由紀子
地上分光計測情報を用いた水稲の葉色診断と生育および品質特性に関する基礎的検討
力丸厚
高橋一義
水稲の葉色は,稲体窒素量と関係性が高く,収量や食味などにも大きく関係する.葉色測定方法には葉色カラースケールと葉緑素計を用いた方法があるが,どちらの方法も計測者が圃場に入り計測を行う他,測定部位によって結果が異なる場合がある.カラースケールは目視にて判定を行うため,天候や照度によってカラースケールの色が異なって見える場合や人為的誤差が生じる場合もある.本研究では,水稲分光計測情報と葉色などの生育状態を示す生育パラメータとの関係を解明し,観測された分光情報から生育診断情報を抽出するための基礎研究を目的とした.具体的には,施肥量を3段階に区分けした圃場の水稲を対象に,ハイパースペクトルカメラを用いて,水稲の面的な分光情報を捉える.また,目視による葉色測定含む慣行生育調査と収量調査を並行して行い,各観測結果を比較検討することによって,分光情報による葉色判定手法の検討を目的とした.
ハイパースペクトルカメラで取得した画像データを分光反射率へと変換し,水稲領域を抽出する.本研究では葉色カラースケールによる方法に着目し,B,G,Rの波長域の分光反射率を用いた葉色判定手法について検討する.一つ目の葉色判定手法として,重回帰分析によるカラースケール番号の推定を行った.B,G,Rの各波長域間の反射率の平均値を算出する.今回は10nm,30nmの波長間隔での平均値を算出した.B,G,Rの各Bandの反射率の相関係数を算出し,相関係数が最も小さい波長域の組み合わせから,重回帰式を作成した.反射率の平均値を説明変数,目的変数を実測した葉色カラースケール番号として,重回帰分析を行い,カラースケール番号を推定した.次に,カラースケール番号とは変化する値ではなく,葉色の程度を番号として判別するものであると考え,順序尺度による葉色判定手法について検討した.順序尺度による葉色判定を行うため,RGB波長域の反射率を用い,葉色判定指標を作成した.算出した,水稲の葉色判定指標値と葉色カラースケール番号の葉色判定指標値とを比較し,一番近い数値のカラースケール番号として判定した.
重回帰分析による方法では,RMSEが許容誤差0.5以内となった.葉色判定指標を用いた方法で葉色カラースケール番号を判定したところ,6月〜7月の正答率は70%以上となり,分げつ期から幼穂形成期間の葉色判定に有効であることが分かった.結論として,生育診断時期である7月上旬の葉色診断に有効であり,実際の生育診断方法での施肥の有無が判断可能であったため,重回帰式および葉色判定指標を用いた葉色判定の可能性を確認することができた.
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