渡邉政博

桁構造による被災メカニズムへの影響と津波被災予測手法の提案

田中康司,有川太郎

東北地方太平洋沖地震による津波により,浸水域の約14%の橋梁が被害を受けた.橋梁が被害を受けることで緊急車両等の通行が妨げられることや,上部工自体が漂流物となり背後地域への被害が拡大することが予測される.また,近い将来に発生が予測されている南海トラフ地震においても同様の被害が想定されることから,橋梁に対する津波作用力を推定し,橋梁の耐津波安定性を明瞭にすることが急務となっている.そこで本研究では,コンクリート製道路橋および鋼製鉄道橋を対象とした水理模型実験および数値解析により,孤立波作用時および定常流下における桁への作用力や橋桁の流出形態を把握し橋梁の被災メカニズムについて検討した.また,津波被災予測手法の提案として幸左らが提案した桁抵抗力津波作用力比βの算出式をもとに,実験により得られた抗力係数,揚力係数の算出式および津波遡上解析により得られた橋梁位置における流速等を用いて被災予測手法を提案し,東北地方太平洋沖地震津波による被害橋梁に対して適用したのち,既往の分析結果との比較を行った.さらには,流体計算と構造計算の連成モデルであるCADMAS-STRを用いて桁の流出解析を行い,計算結果の妥当性について検証しCADMAS-STRの適用性について検討した.
実験及び解析結果より,孤立波作用時は波高に比例して水平力および上向きの鉛直力は増加し,定常流下においては流速の2乗に比例して水平力および下向きの鉛直力が増加することが確認された.コンクリート橋については孤立波の作用により作用モーメントに対する安全率が1を下回り桁の前面が浮き上がったのち波の進行方向に流出する.定常流下においては流速の増加とともに摩擦抵抗力が増すため桁の流出は見られなかった.一方で,鋼橋は水平力の作用面積が大きいため,孤立波の作用により滑動したのち回転し流出するような流出形態であった.また,滑動に対する安全率の算出結果より,定常流下においても滑動する結果となりコンクリート橋とは異なる流出形態であることが確認された.
提案した津波被災予測手法では津波遡上解析の計算格子が50mと粗いため,流速が小さくなりβ値が大きくなる結果となった.現段階においては桁の形状による影響について考慮していないため,より詳細な計算を行うとともに桁の形状が与える作用力への影響を考慮することで津波に対する橋梁の被災予測精度は向上すると考える.

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