大谷 拓矢

薄肉鋼管の接着接合に関する基礎研究

宮下 剛

自然災害が多い日本では,地震や豪雨などによる斜面崩壊が多発しており,盛土保全が急務である.現在,鋼管を盛土中に水平に埋設して,排水管の役割を担う水平ドレーンとして使用する工法が提案されている.しかし,この工法で使用される薄肉鋼管は現場で溶接する必要があり,十分な精度で接続するためには高度な溶接技術が求められる.このため,現場で簡易的に鋼管同士を接続できる技術の開発が強く望まれている.
そこで本研究では,溶接に代わる鋼管同士の接続方法として,金属同士を接着する構造用接着剤に注目した.その接着剤を用いて鋼管同士を現場で簡易的に接続する方法の開発・提案することを目的とし,その接続方法が本管部分と同等の曲げ強度,引張強度を有することを検証することで実用化を目指す研究である.
まず,引張せん断接着強さ試験により鋼管同士を接着するために使用する接着剤の強度確認を実施するとともに最適な接着剤の選定を行った.その後,選定した接着剤を用いて,現場で簡易的に接続できる方法を提案し,曲げ試験によってその接続方法が本管部分と同等の曲げ強度を有するのか検証した.また,盛土内に鋼管を埋設することを想定し,数値計算によって強度の実用性について検証した.以下に得られた結果を述べる.
(1)引張せん断試験では2種類の接着剤を選出し,両方の強度確認を実施した.試験体の降伏点に対する荷重レベルで比較すると,約1.5倍〜2倍程度の差があった.強度および施工性の観点から1つの接着剤を選定した.
(2)最初の試験体では,さや管のスリットの有無,定着長の長さ不足により強度が低い結果となった.その結果を受け,試験体を改善し再度検証を行ったところ,鋼管のみの強度以上の強度を発揮した.また,さや管の長さおよび接着厚さをパラメータに強度比較を行ったところ,さや管長さが長く,接着厚さが薄い方がより高い強度を発揮する結果となった.
(3)鋼管を盛土内に埋設することを想定し,埋設管の設計法および土の死荷重が鋼管に作用すると想定した場合で強度比較を実施したところ,埋設管の設計法による計算結果では,十分な強度の結果が得られたが,死荷重算出によるものでは,強度不足のケースも存在した.

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