廣川 渉

新潟県付近の日本海における水環境の変動把握

細山田得三,犬飼直之

地球温暖化によって気温上昇,海面水位上昇などの様々な影響が全球規模で報告されている.温暖化による影響は地域や地形によって異なり,日本海側で起こりうる問題としては海水温上昇による海面の上昇や生態系の変化,冬季の高波浪出現傾向の変化が挙げられる.本研究では新潟県を中心とした日本海側の気温や水温,水位などの現在環境がどのように変化をしているか観測資料を整理し,環境変化の傾向を把握した.また,日本海側で高波浪が発生する冬季の低気圧についてテレコネクション指標,海面水温と比較を行い発生,発達経路の違いや発達しやすい環境条件の特定を行った.新潟沖での鉛直水温分布を数値計算によって再現し,将来の海面水温から海洋内部の温度分布を計算した.この鉛直水温分布を用いて2100年時点での熱膨張量および鉛直分布を算出した.
環境変化の把握では,日本国内の気温は長期的に上昇している.特に中緯度地域の上昇率が顕著であり,1900年代からは,一定期間の気温上昇期間の後には気温の停滞期間が発生するなど階段状に上昇していることが確認できた.海面水温も日本海北東部海域では1950年以降,日本海中部・南部海域では1900年以降海面水温が上昇している.5年移動平均値の気温と水温は一致した連動を見せており,気温と水温は伴って上昇していることが確認できた.新潟港における冬季の6m以上の高波発生時には,爆弾低気圧が発生していることが確認できた.この低気圧が発生した月の海面水温,テレコネクションの指標を比較した.結果は,北極振動指数(AOI)やエルニーニョ南方振動(ONI)の正負による低気圧発生数の増減はなかった.しかし,低気圧発生・発達海域ではエルニーニョ期間,AOI正の時には東シナ海〜太平洋上で爆弾低気圧が発生しやすく,ラニーニャ期間,AOI負の時には大陸〜日本海上で爆弾低気圧が生じていることを明らかにした.他のテレコネクション指標を加えて環境条件からの発生海域判断表を作成した.新潟沖の鉛直水温計算では,熱塩循環や海上風は考慮せずに海洋内の温度躍層の厚みと熱拡散係数のみで再現を行った.再現の結果,新潟沖の夏季の温度伝播と分布を再現することができた.このモデルを用いて2100年時の鉛直水温分布を再現し,熱膨張量の算出を行った.

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