NGUYEN BAO TRUNG

排水パイプによる宅地の液状化対策に関する実験的検討

大塚悟

液状化の対策として今日までに数々の液状化対策工法が考案されてきたが,それらは主に大規模な土地開発と同時に行われるものであり,住宅一戸あたりに施工が施されることはなかった.それは地盤改良が高コストであったり施工機械が巨大なことが原因なのだが,これらの問題を解決し,戸建住宅ごとの施工が可能になれば,被害予想地域の液状化を綿密に防ぐことが可能になる.従って戸建住宅を対象とした対策工法として「排水パイプ工法」が提案されている.排水パイプ工法は側面に穴を開けた塩化ビニル管を地中に埋めることににより過剰間隙水圧の消散を促す工法である.実現化されれば,低コストであり,施工機械も小規模なことから戸建住宅に向けての利用が可能となる.従って本研究では排水パイプ工法の実現化に向けて,振動台模型実験を用いて性能評価を行うことを目的とする.この目的を達すために3ケースを行う.Case A:振動台模型実験に用いるパイプ模型が適切なものか判断する事前実験を行う.Case B:排水パイプを正方形に配置し,ピッチを変更することによる性能の評価を行う.Case C:周辺配置と直下配置の性能評価を行う.本研究で地盤は東北硅砂6号を用いて水中落下法で作成した.またCase C で建物の模型サイズ:200×200×78(mm) の大きさと2.06 kg の重さのものを作成した.結果はCase A でパイプ模型はシリコン性で長さ150mm直径10mm,側面の穴を1mmとした模型が適切であることが分かった.従って,Case BとCase Cにこの模型を用いることにした.Case Bではピッチが広くなったらパイプによる消散効果が無くなって行き,水圧と沈下量の増加が確認された.具体的にはパイプのピッチが20cmになったケースで消散効果が全く無くなった.ピッチが狭い場合は,深いところ(pwp1-深さ9cm)と浅いところ(pwp5-深さ4.5cm)で同じ水圧となった.深い場所ではピッチが最も小さいケースで過剰間隙水圧比が約0.5と液状化を防げたが,浅い場所では最小でも約0.8と液状化を防げ無かった.また,本研究ではドレーン工法で用いられるのと同様な過剰間隙水圧比とa/b(a:ドレーン半径,b:ドレーンの影響半径)の関係図を作成することができた.Case Cでは沈下量に関しては建物の周辺にパイプを配置したケースと,建物のみのケースで数値に差があまりなかったことから,周辺配置では液状化による沈下を防げなかった.建物直下にパイプを配置したケースでは,パイプが建物を支えてしまう結果となったので,正確に測定することはできなかった.

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