中川 新地

中越・中越沖地震の広域計測震度分布に基づく家屋被害予測

大塚 悟

東北地方太平洋沖地震以降,大地震に備えるためにより詳細な被害想定を行う自治体が急増した.しかし,これらの想定に用いられているデータは兵庫県南部地震の被害データが中心であり,都市部のデータが用いられている.本研究では,新潟県中越地震及び中越沖地震の被害データと広域計測震度分布を用いて,土地条件区分別に建物被害関数を構築し,その関数による建物被害数と実被害数との比較を試みている.
中越及び中越沖地震の被害家屋の罹災証明記録と文部科学省科学技術振興調整費による研究プロジェクトにおいて78の計測点から推定された広域な計測震度分布データ6)を用い,国土地理院が整備を進めている土地条件図の土地条件区分を考慮した建物被害関数を構築する.本研究で用いている計測震度分布データは,実際に観測された計測震度を基に補完したものを用いており,被害から推定した兵庫県南部地震のデータより正確な震度分布を用いている.また,被害のあった家屋だけでなく,対象地域内の全家屋をポイントデータ化し,戸別単位の分析を可能としている.
従来のモデルでは,都市部を想定しており,様々な地域で対応できない.そこで,中山間地での中越地震と海岸平野での中越沖地震のデータを用いて,地形分類を取り入れることで,汎用性と精度の向上を図った.これは、地形分類によって,計測震度の分布が異なり,被害率が大きくなる計測震度に違いがあることが分析結果から明らかとなったからである.同じ土地条件区分であれば,多くの土地条件区分において,異なる地震であっても似た建物被害関数となることを明らかにした.しかし、地形分類で細かく分けるとデータ数や分類の細かさによりばらつきが発生してしまう.そこで,似た性質の地形分類でグルーピングを行い、データ数を確保した.さらに、既往の研究で考慮されている建築年代を加えて建物被害関数を構築した.その結果、地形分類によって建築年代が及ぼす影響が異なることを明らかにした.また、建築年代の影響を3パターンとし,建築年代を説明変数として関数に加えて,建物被害関数を構築した.
構築した建物被害関数を用いて,実被害と予測結果との比較を行った.2つの地震を合わせると実被害数とほぼ等しい被害数を予測することができている.実際の被害と比較することで,本研究で構築した建物被害関数の汎用性と精度の高さを確認することができた.

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