岩成 貴志

複素反射率を考慮したCA法による3次元騒音伝搬解析

宮木 康幸

騒音対策は主に「発生源対策」,「伝搬経路対策」,「受音側対策」の3つに分類できる.既往の研究ではその中の「伝搬経路対策」に供することを目的に遮音壁の効果予測や形状の改良効果等を調べてきた.伝播経路対策を効率的に進めるためには,精度の高い伝搬解析シミュレーション技術が必要不可欠である.そこで,複雑系の解析手法として有力視されているCA法を用いて騒音伝搬解析を行い,その精度について検証を行ってきた.CA法は計算対象を均一な大きさのセルに分割し,各セルで定義された離散的な状態量を近傍のセル間に設けた局所近傍則によって,離散的時間を追って状態量を推移させる手法である.これまでの研究で,CAモデルによる騒音伝搬解析をより実用上使用可能なモデルに近づけるために,CA法による3次元音場での解析手法を構築し,妥当性の検証を行った.その結果,3次元音場においても受音点の音圧レベルをかなり正確に推定できることが分かり,3次元CAモデルの妥当性が示され,CA法による3次元騒音伝搬解析が可能となった.しかし現段階では,音の反射に関しては完全反射のみしか考慮できておらず,グラスウールなどの多孔質素材を含んだ遮音壁や透水性舗装などの舗装面における位相差の含んだ吸音反射を表現できず,その結果,遮音効果を過小評価する可能性が考えられた.
そこで本研究では,騒音伝搬解析をより実用上使用可能なモデルに近づけるために,3次元音場において吸音及び多孔質の反射面を考慮可能な解析手法として再構築することを目的とした.このため,日本工業規格に記述されている定在波比法を用いた複素反射面を考慮可能な境界条件を構築した.
その結果,新たに構築した反射面の境界条件により,位相角のない吸音反射の音圧レベルの数値解析値は理論値と概ね近い結果が得られ,完全反射面における数値解析値は既往の境界条件の数値解析値より精度が向上した.位相角のある反射面においても位相角が小さい場合の音圧レベルの解析値は,理論値と概ね近い結果が得られた.また,位相角が大きくなるほど解析値と理論値の誤差が大きくなるが,変動の傾向は概ね一致し,実用上許容されるレベルで解析できることがわかった.

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