中村 友樹
ひび割れ抵抗性を向上した薄層オーバーレイ用SMAの開発
高橋 修
近年,コスト縮減や環境負荷低減の観点から,薄層オーバーレイによる維持修繕が注目されている.しかし,ひび割れが発生している路面での薄層オーバーレイの適用については,リフレクションクラックの早期発生が懸念される.そのため,現在は,ひび割れ抑制の機能を付与した薄層オーバーレイ用アスファルト混合物の開発が求められている.
ひび割れ対策に様々な手法が検討されているが,対策の一つとして,アスファルト混合物の柔軟性を高める方法がある.柔軟性の高いアスファルト混合物は物理系凍結抑制舗装においても検討されており,その中に特殊改質材を用いるものがある.本研究ではその特殊改質材に着目し,ひび割れ抵抗性の優れた薄層オーバーレイ用アスファルト混合物を開発することを目的に,各種評価試験を実施してひび割れ抵抗性の向上について検討した.
特殊改質材は,アスファルトバインダに溶融してバインダの粘結力を低下させる低温脆性改質剤(A剤)と,加熱膨張すると中空球状粒子として混合物に弾性を付与する微粒状熱膨張材(B材)の2種類を使用する.本研究で検討するアスファルト混合物の種類は,塑性流動抵抗性に優れる砕石マスチックアスファルト(SMA)の骨材配合とし,これに改質アスファルトと2種の特殊改質材を添加する.
まず,2.36mmふるい寸法の配合率を調整して,十分な強度が得られるベース骨材配合を決定した.次に,特殊改質材の添加量を決定するために圧裂試験を実施し,改質H型に対してA剤10%+B材0.1%の最適添加量を決定した.そして,決定した配合と添加量において静的曲げ試験を行い,脆化点と曲げひずみの評価を行った.その結果,A剤を添加することで脆化点が下がり,B材を添加することで,広温度域での変形追従性が向上することが判明した.また,疲労ひび割れ抵抗性を評価するために曲げ疲労試験を実施し,特殊改質材を添加しないものに比べてA剤のみを添加したものは疲労ひび割れ抵抗性が向上し,A剤とB材の両方を添加したものはさらに疲労ひび割れ抵抗性が向上することを確認した.
以上のことから,ひび割れ抵抗性はA剤のみの添加でも向上するが,さらにB材を添加することによって,より向上することがわかった.また,特殊改質材を添加して柔軟性が高くなったアスファルト混合物に対してホイールトラッキング試験を行って塑性流動抵抗性の確認を行った.その結果,特殊改質材の添加による塑性流動抵抗性の低下は認められなかった.しかし,カンタブロ試験を実施したところ,A剤を添加すると骨材剥離抵抗性は向上するが,B材も添加すると低下することがわかった.そのため,B材を添加することにより骨材剥離の原因に繋がる可能性が懸念されることから,その原因の解明と改善が今後の課題である.
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