ken14102

上野あかね

直接引張試験による3層構造埋設ジョイントのひび割れ抵抗性の評価

高橋修

伸縮分散型埋設ジョイントとは，橋梁ジョイント部における橋面舗装の基層部に格子パネルを用いて舗装全体を補強し，桁端部の変位による応力，ひずみを舗装体の広範囲に分散吸収させる工法の一つである．埋設ジョイントの主な破壊形態は，主桁の温度変化に起因する伸縮によって床版を含めた桁端部が橋軸方向に変位することで引き起こされる横断クラックの発生である．このような外的な変形作用は，曲げを伴わない緩慢とした強制変位である．検討対象の埋設ジョイントは，表層と基層，およびその下の格子パネルを埋め込んだ複合体の3層で構成されている．格子パネルの特性によってパネル複合体の層には，単純引張に対しては破断が見られない変形挙動であるため，埋設ジョイントの桁伸縮に伴うひび割れは，表層と基層の伸縮性能に依存している．
本研究では，3層構造埋設ジョイントのひび割れ抵抗性について，各層単体と，表層と基層を一体化させた2層一体の供試体の直接引張試験を実施し，3層構造体のひび割れ抵抗性能を評価した．さらに，埋設ジョイントに作用する実際により即した外力を再現し，それに対する耐久性を把握するため，供試体に段階的に引張を作用させる段階引張試験を行い，定ひずみ速度の引張に対する性能と比較した．そして，それらの結果から3層構造体のスティフネスを推定し，実構造に生じる最大ひずみを見積もって， 3層構造の埋設ジョイントの構造条件におけるひび割れ抵抗性能を評価した．
その結果，直接引張試験では表層単体，基層単体，および表層と基層混合物の2層構造体において，明確にひび割れ抵抗性の差が確認された．2層構造の供試体は単体と比較した場合に基層単体の影響を強く受ける傾向が確認され，パネル複合体の層においては，単純引張に対しては破断が見られない変形挙動であることが確認された．段階引張試験では，引張荷重により応力は増加するが，引張作用を休止すると応力は大きく緩和し，引張を再開すると再び応力は増加することが認められた．そして，引張回数の増加とともに応力の増加量は増え，最大値になった後次第に応力の増加量は減少していく傾向が見られた．直接引張試験と比較すると，破壊時ひずみは大きくなり，20,000×10-6前後になることが確認された．パネル複合体に対して，時間温度換算則を適用し，実際の埋設ジョイント3層構造埋設ジョイントの舗装体スティフネスを推定すると，300 kgf/cm2程度となった．そして，それらの結果から，実際の舗装体に発生するひずみは9040×10-6程度と推定された．
以上より，3層構造の埋設ジョイントの構造条件における適用性は十分にあると推察される．

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