松原 龍彦

首都圏遠郊部の市街地の密度に関する研究

中出文平 樋口秀 松川寿也

現在日本は人口減少社会に突入しており、都市の拡大を前提とした都市計画は、時代にそぐわない。我が国では、昭和35年に都市的地域の特質を明らかにするための地域単位としてDIDが定義された。しかしながらDIDは市街地のスプロール化などにより、多くの都市で密度が減少し面積が拡大している。それと共に地方都市では、既成市街地の衰退が問題視されている。
一方市街地のスプロール化を防ぐ目的として、都市計画の面からの区域区分制度は、一定の効果を挙げたとされる。区域区分の定められていない都市(以降非線引き都市)での用途地域は、区域区分を定められている都市(以降線引き都市)の市街化区域とほぼ同等のものである。しかしながら非線引き都市の用途地域外は、線引き都市の市街化調整区域と比べて規制が緩い。非線引き都市の用途地域の外で開発が発生してしまうことは、低密で散漫な市街地を形成する原因となり、それは用途地域内だけでなく、中心市街地にも少なからず影響が出ると考えられる。
本研究は、各都市の第1DIDを既成市街地とし、区域区分の有無が既成市街地の密度変化に影響を及ぼすと仮定することによってその動向を探る事を目的とする。
まず研究期間を昭和45年から平成12年とし、人口10万人前後で線引き・非線引き都市が数多く存在する北関東3県から対象期間内に1度でもDIDを形成していた都市を抽出する。これら各都市の人口やDIDの関連指標を把握し、クラスター分析によって詳細対象都市を抽出する。その後詳細対象の各都市を平成12年国勢調査の小地域に区切り、線引きの有無による市街地の密度変化の違いを明らかにしている。
非線引き都市では、中心市街地で人口密度が40[人/ha]を下回る都市も確認でき、また用途地域外でのスプロール化に歯止めがかからない状態にあり、後追い的に用途地域を指定した都市があることも明らかになった。また線引き都市であっても市街化区域の設定が過大であると、中心市街地での密度が低下し低密な市街地を形成し、DIDの拡大しない都市が浮かび上がった。
本研究では主に非線引き都市について、立地適正化計画を利用して市街地のスプロール化をコントロールすることを提言している。居住誘導区域だけでなく、都市機能誘導区域を設定することによって用途地域外の沿道で大型店舗が立ち並ぶことを防ぐことで、スプロール化の一因を取り除くことも求められる。

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