田之上 貴紀

人口減少フレーム下での区域区分定期見直しの実態とあり方

中出文平 樋口秀 松川寿也

我が国では区域区分が施行された昭和40年代後半では人口増加が著しく、市街化区域への編入が進んだが、平成20年を境に人口減少に転じた。市街化区域は現在の社会情勢に合わせるため定期見直しを経て区域を更新する。この際、人口増加時では将来人口が既成市街地に収容できないため、溢れ出した人口を新市街地として市街化区域へ編入できるが、人口減少時では既成市街地に将来人口を収容できるため、市街化区域を拡大する必要が無く、むしろ逆線引きすべきである。しかし、多くの区域で市街化区域を拡大しており、近年提案されている都市集約化に逆行している。
人口減少下で市街化区域を拡大するには、将来人口の推計を過大に見積もる手法、可住地人口密度を減少させる手法、非可住地の定義を変更する手法が想定されるが、区域の実情と異なることや、低密で散漫な市街地を形成してしまう可能性が高い。そこで本研究では、人口減少下での人口フレーム設定の考え方、定期見直しの内容について実態を明らかにするとともに、人口減少下での定期見直しについて提言することを目的としている。
研究手法は、まず、地方圏の線引き都市計画区域から十分に区域区分の実績のある区域を抽出し、直近の定期見直しについて把握するため、40道県(84区域)にアンケート調査を実施した。この区域から人口減少社会下での定期見直しについて十分な経験があると考えられる45区域を抽出し、類型化した上で特徴的な6区域を選定した。その後資料収集やヒアリング・現地調査により、人口減少下での定期見直しの実態を明らかにしている。
人口減少を想定している佐賀・長野・和歌山・金沢都市計画区域では、人口増加を想定している伊勢崎・大分都市計画区域と同様に市街化区域へ編入する地区が存在するが、新市街地に充てる人口の確保に苦慮していることが明らかとなった。また、実人口が増加している区域ではこの傾向が顕著であり、特に和歌山・金沢都市計画区域では3手法(人口推計・人口密度・非可住地の定義の変更)を使用して新市街地に充てる人口を確保していることが明らかとなった。しかし、この手法は実現性の低い将来の仮定の値を使用するため、現実とかけ離れた見直しとなり、より散漫な市街地を形成している。そのため、短期的には市街化区域を維持しつつ、長期的に都市規模を縮小する必要がある。
本研究では都市規模を縮小するために、立地適正化計画を利用した逆線引きを提案している。市街化区域内に居住誘導区域を指定し、一定年経過後に区域外の人口密度が低い区域を逆線引きすることで無理のない市街化区域縮小が可能である。また、居住誘導区域の指定は定期見直しの市街化区域規模の算定と手法が酷似しているため、同時に見直すことが望まれる。

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