加藤 賢史

自然公園法の許可制度における風力発電施設の取り扱いに関する研究

中出文平 松川寿也 樋口 秀

近年、政府は民間事業者の参入を促しながら再生可能エネルギーへの転換を積極的に推進させ、その補給地として自然公園地域が注目されている。その中で風力発電施設については、平成16年の自然公園法施行規則の改正や自治体任意の立地ガイドラインが一部で策定されており、風力発電施設の立地をコントロールする仕組みが一定程度整備されている。しかし、民間事業者による売電目的での施設が自然公園地域内で許可o届出され、一部地域では特別地域での立地許可や特別地域に近接した立地等の事案が散見されている。そこで本研究では、風力発電施設立地の問題を我が国の土地利用制度の視点から、自然公園法上で風力発電施設が許可又は事業中止となる要因を解明し、アンケート調査で全国的な動向を確認することで、自然公園法の土地利用制御手法の一助とすることを目的としている。
本研究では、「特別地域に立地した事例」と「普通地域ながら事業中止になった事例」の2つのパターンで調査を進めるとともに、特別地域がむき出しとなった自然公園に近接した風力発電施設の立地要因も知見の1つに加える。詳細対象施設として静岡県の御前崎遠州灘県立自然公園第2種特別地域に立地した御前崎風力発電所及び遠州掛川風力発電所、三重県の室生赤目青山国定公園第3種特別地域に立地した青山高原風力発電所、山形県の庄内海浜県立自然公園普通地域で事業中止になった酒田市の事例を選定した。これらの分析から、特別地域内で風力発電施設が立地した要因は、許可基準の判断に係る展望地の際に、本来採用されるべき展望地を削除して許可した事案や自然公園法の特例を適用して、景観に関する許可基準を削除して許可した事案が判明した。また、特別地域がむき出しになった自然公園の内外で一体的に立地した風力発電施設の場合は、自然公園地域外の風車を許可基準の対象に出来なかったことが判明した。事業中止になった要因は、普通地域ながら特別地域並みの自然資源有していたことと「2段階審査方式」と呼ばれる独自の審査方式によって事業中止になったことが判明した。
詳細対象施設の分析とアンケート調査から判明した自然公園法上の許可基準の問題は、特例等の逃げ道があること、実効性のある事前協議がされてないこと、現行の審査基準が曖昧であること、普通地域が本来の意味を成していないことであった。そこで、事前協議の義務化や許可基準の補助、特例を適用する際の指針等を明記したガイドラインを作成することを提案している。これにより自然公園地域での風力発電施設立地を一定程度コントロールすることが可能になる。また、特別地域内外での風力発電施設立地を未然に防ぐために特別地域の周辺に普通地域を指定することが望まれる。

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