鈴木 拓海

ICカードデータを用いた公共交通利用者の継続利用日数の特性に関する研究

指導教員 佐野 可寸志 

本研究では,ICカード「ですか」の連続的・長期的なトリップデータを対象とし,生存時間分析を用いて利用者減少確率を推定することで,利用者の特性ごとに減少確率に違いがあるかを確認する.また,個人別利用特性を算出し生存時間分析における説明変数として導入することで,利用減少に関与する要因についての把握も行う.
分析に用いるデータとしては,高知都市圏ICカードデータ「ですか」のデータで,カードID・利用日・利用系統・乗車時間・乗車停留所・降車時間・降車停留所・利用金額・券種などが記載されている.株式会社「ですか」から頂いた2012年9月1日から2012年12月31日までのトリップデータを用いて,利用者ごとの利用特性を算出している.また,減便施策前後の利用変化の比較を行うために,減便前後2カ月間で,それぞれ2日以上のトリップが確認できたIDの26681人のトリップを対象とする.
分析方法としては,生存時間分析を用いる.生存時間分析とは,イベント(event)が起きるまでの時間とイベントとの間の関係に焦点を当てる分析である.公共交通の利用者の変化にはあらゆる要因が関与していると仮定し,複数の要因が寄与するハザード関数に対して適応することが可能なハザードモデルである「Coxの比例ハザードモデル」を用いる.基準ハザード関数に用いる基準値は,減便前の利用と関連を持たせるために「減便前2ヶ月間の週間平均トリップ日数の50%」と設定した.これに基づき,全体を対象とする基準ハザード関数の算出を行った.また,Coxの比例ハザードモデルに適応するデータ対象期間での各IDの利用特性を共変量に設定した.対象とする26681人に対し,共変量の推定を行っている.パラメータの符号が負である場合,説明変数の値が大きくなるほど,利用者の減少確率が高くなることを意味している.
各券種の利用者減少確率の推定を行った結果としては,各券種で利用者減少確率に違いが確認でき,小児・大人無記名・大人記名が比較的大きな値となった.また,対象ID全体では,利用減少に最も寄与している要因は「対象期間トリップ日数」となり,トリップ日数が多いほど,今後利用が減少する確率が高いことが分かった.

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