北川春樹

降雪地域における冬季の車両挙動を考慮した信号制御パラメータに関する研究

指導教員  佐野可寸志・西内裕晶

新潟県のような積雪寒冷期が長い地域において,積雪は交通流に大きな影響を与えている.よって,夏季と冬季では自動車挙動が大きく異なるため,時期に合わせた信号制御が必要である.しかし,信号設計時の指針には季節や地域特性が道路交通にもたらす要因が十分に含まれていない.この理由は,冬季の道路交通の実態が明らかになっていないためである.よって,一年を通して夏季の交通状況から信号制御を設計しているのが現状である.
自動車の運転において一番重要なのは「止まる」ことである.しかし,積雪路面では,タイヤと路面の摩擦係数が大きく低下し制動距離が長くなるため,運転者はスリップを避けるために余裕を持った運転に切り替わっている.そこで,冬季の自動車挙動を定量的に把握するために,交差点ビデオ映像を基に様々な調査から夏季と冬季の交通状況を比較した.調査対象地点は,長岡市の愛宕交差点である.計測では,走行車両の速度や車頭時間から分析を行った.飽和交通流率を算定すると,夏季とは大きな差が生じており,冬季専用の信号制御の重要性を把握した.また,交通量で方向別に比較すると,冬季は右折が直進・左折に比べ低下していることから,右折車の挙動についても分析した.以上の分析から,冬季の自動車挙動を把握し,今後の信号制御設計時の基盤を作成した.
次に,冬季の自動車挙動を再現したシミュレーションモデルから,朝の交通ラッシュ時の道路交通をより円滑にさせるために,信号制御を用いた過飽和時の渋滞緩和施策の評価を行った.信号制御とは,サイクル長・スプリット・オフセットの三点である.サイクル長の延長では,加速時間の割合を減少させ,有効青時間を増大することで,効率的に車群を捌けることを確認した.スプリットでは,サイクル長の延長した時間を各現示に振り分け直した.必要最小青時間が足りていない現示を中心に,需要のバランスを調整し直すことで,積雪路面による遅れをより減少させることに成功した.オフセットでは,作動時間を設定し直し,スプリット同様に遅れの変動を分析した.以上が信号制御を用いた渋滞緩和施策である.冬季専用の信号制御の設計により,積雪路面の遅れを緩和できる可能性を示唆することができた.

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