小林 要一

二時期の航空LiDARデータを用いた森林の生育状態の把握に関する検討

高橋 一義,力丸 厚

森林の生育状態の把握には,一時期のデータによる静的な現存把握と,経年データを用いた変化の評価による動態把握が考えられる.動態把握では,自然状態での生育と人的な伐採や災害による外的要因による状態の変化が把握できる.経年データの比較による動態把握を実施するには,比較されるデータ間の互換性の確保が重要な技術的要素となってくる.近年,航空LiDARデータを用いた森林計測の実施が普及しはじめているが,計測目的が林床面の地形計測に主眼がおかれているために,樹葉の少ない落葉樹の計測が多く,森林資源や生育状態の把握には,問題を生じる場合が多い.特に,経年変化を把握する場合計測の季節が異なると,計測された現象の互換性を確保するための付加的な解析処理が必要となってくる.
本研究では,比較する二時期のLiDARデータ間の互換性の確保を検討し,二時期データ比較による森林の経年変化から,森林の動態把握を行い,森林が自然状態で成長しているのか,伐採などの外的な要因があったのかの判別の可能性について検討することを目的とした.また,互換性確保および生育状態の判別結果に関しては,現地調査および既存の調査資料を踏まえて,その妥当性の考察を行なった.
使用した二時期のデータは,平成16年12月着葉期と平成23年10月落葉期に計測した航空LiDARデータである.この二時期LiDARデータ間の互換性の確保を検討するために,二時期のDSM(数値表層モデル)とDEM(数値標高モデル)を作成し,この差分から,DCHM(樹冠高モデル)作成し,平成16年落葉期DCHM樹冠高推定処理を行った.
樹冠高推定処理を行った結果,落葉期と着葉期の,二時期の航空LiDARデータ間の互換性を確保することが推測された.ここでは,樹冠高推定処理のウインドウサイズ別の樹冠高の累積ヒストグラムを作成することで,データ間の互換性の確保について検証することができた.また,二時期の樹冠高差分の平均値と標準変差,樹冠高9m以上の領域面積を算出することで,ウインドウサイズの妥当性の検討することができた.本研究対象では,適正ウインドウサイズは7mとした.森林動態の把握として,二時期のDCHMの差分を算出することで,伐採分布を抽出することが可能となった.長岡市寺泊高内地区堤外地において,伐採分布は,約3年で,樹冠高平均で4.1mの成長が推測された.同様に,自然成長の分布について抽出可能となった.

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