中島 育海

光学式透過型降水粒子計測器による降水量算定に関する研究

熊倉 俊郎

 雪害対策や気象予測、積雪による水資源の供給量予測には正確な雪の降水量の測定が必要である。しかし雪やあられなどの固体降水は、雨のような液体降水と違い、種別によって、また同じ種別でも個々で形状や密度が大きく異なることから、その正確な計測が困難である。現在、固体降水を測定する方法として、光学式透過型降水粒子計測器を用いる方法がある。これは計測器の光のシートを粒子が通過し、光が遮られると、その光の減衰から粒径や落下速度を求め、その降水の種別を割り出し、更には降水量も計算するというものであるが、その降水量の正確性はあまりよくない。また今ある計測器では、捉えた粒子の信号を計測器内部で処理をし、その結果のみ出力されるため、粒子一つ一つへのアプローチをすることはできない。さらに、既存の計測器では、粒径の細かい粒子が正確に計測されないという問題もある。
 そこで今回、粒子に直接のアプローチができ、且つ粒径の細かい粒子の計測が可能な計測器として、吹雪計測器を降水粒子計測器として流用し、出力される結果から降水量の算定を試みた。計測器では、光の減衰が電圧として出力されるため、この電圧から降水量の算定を考えた。同じ種別であれば、最大電圧及び電圧変化が見られた継続時間が大きくなるほど、降水量が増えることを利用し、この出力される電圧と継続時間による、電圧の波形の面積を求め、降水量と比較し、その関係を調べた。
 その結果は降水量をPre、電圧と継続時間の面積をSとした時、Pre=9.80S^(3/2)となった。RMSEは0.41mm/hとなり、降水量の推定は、正確とは言えないが、およその値を求めることはできた。ただ、降水強度が増えるほど、Sとの関係性が見られなくなり、降水量に対し、Sが小さいデータが多く目立つ結果となった。これらの誤差の原因として、粒子の形状が完全球体ではなく、歪な形をしていることや、計測器の光シートの端に粒子が落ち、粒子全体が計測されていないことが影響しているのではないかと思われる。後者の光シートの問題に関しては、光シートの面積や粒径など、誤差がどの程度出るものか求めることが出来るため、この問題に対し、誤差がどの程度のものであるのか、より詳しく解析を行う必要がある。

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