鉄泰弘

河川に流入する放射性物質と水文量の関係についての研究

陸旻皎

2011/3/11に発生した東北地方太平洋沖大震災とそれによって発生した津波により,沿岸部にあった福島外1原子力発電所でも大きな被害を受けた.結果炉心融解や水蒸気爆発を伴った放射性物質の放出が起きた.当時の風向きにより主に栃木県北部から福島県中通りは多くの放射性物質の飛来が確認された.放射性物質の中でも最も重要とされているセシウム(Cs-134,Cs-137))はアルカリ金属であり,陰イオンを持つ土砂に吸着しやすい特性を持つ.その地域に雨が降ることで放射性物質混じりの土砂が河川に流入し,その水を使用する浄水場では問題となっている.この放射性物質含有汚泥はその含有量によって処理の方法が規定されている.
本研究では,どの経度の降雨により地表の放射性物質が河川に流れ込むのか,その後地表の放射性物質は減っていくことが考えられるが,安全域に達するにはどの経度の時間が必要になるのか考察する.対象河川は荒川流域・利根川流域を選択した.これらの流域は事故後の風向きや降雨によりそれなりに汚染が確認されて地域である.また,今回対象とした浄水場は主に埼玉県内のみに給水しているが,荒川も利根川も下流域では東京や千葉などといった都市圏に主に供給する河川のためこちらを選択した.
研究の結果,セシウム類以外の放射性物質も多く放出されたが,そもそも排出量が極端に少なく,半減期が短く直ぐに崩壊するものばかりで,基本的にセシウム類だけを見て考察をおこなってもいいとがんがえられる.また継続的に放出されているものに関しても,半減期による減衰を加味してもかなり小さい値のため無視して研究を行う.降雨による放射性物質の入流はおよそ半年間で落ち着き,それ以降は低いところでまとまっている.減少の激しい前半部で見ると特に減少が大きかった数日前に強度の強い雨が振っていたなど降雨強度による影響は大きい.その分ほぼ定数となる半減期による影響は比較的小さくなる.逆に大部分の放出が終わった期間では外部からの流入も流出の少なくなるため,半減期による変動も無視できない値となる.今後は河川中の放射性物質の減少に半減期が大きな役割を持つと考えられる.

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