西潟智広

単位水量測定による実構造物のコンクリート性能評価に関する研究

丸山久一

コンクリート構造物の耐久性や強度を確保するためには,コンクリートの品質確保が重要である.従来は,硬化後の強度を事後確認することによって,コンクリートの品質が確認されていたが,近年では,検査技術が向上し,工事現場でフレッシュコンクリートの単位水量と水セメント比を測定することが可能となった.このような革新的な検査技術は,生コンクリートの加水問題を根本的に解決するために開発された歴史的経緯を有する.また,コンクリート構造物の施工においては,設計で仮定されるコンクリートの品質が確保されることが重要である.しかし品質のばらつきは製造段階,打設時など様々な要因で発生する.そこで本研究では単位水量測定器を用いてコンクリート品質のばらつきを把握することができるかを調査した.
まず調査に際して使用する単位水量測定器の性能を検証する試験を行い測定器の精度を確認したのち,コンクリート品質のばらつきの調査を行った.測定器の性能確認試験を行い,単位水量,水セメント比,セメント種,モルタル温度,練置き時間といった配合による影響,環境的な影響を与えた時の単位水量,水セメント比の測定結果と設計値を比較した結果,単位水量と水セメント比が近い値で測定できる性能を有していることが確認できたためばらつき調査に使用した.
 コンクリート品質のばらつき調査ではアジデータトラックの内部でのコンクリート品質のばらつきを調査するために,アジデータトラックから荷卸される生コンクリートを序盤,中盤,終盤で採取し,単位水量測定,粗骨材質量測定を行うことで荷卸時の生コンクリート品質のばらつきを調査した.また,実際のコンクリート構造物のかぶりコンクリートの品質のばらつきを調査するため試験体を作製し,試験体上部と下部,鉄筋のあき幅,コンクリート配合による品質のばらつきを調査した.
 その結果アジデータトラックから荷卸されるコンクリートは序盤に粗骨材が多く含まれていることを確認した.この原因としてはアジデータトラック内部でコンクリートを撹拌する時にモルタル分と粗骨材の単位体積質量の違いから材料分離が生じたためだと考えられる.また試験体の実験結果から,部材上下で単位水量,粗骨材率のばらつきが生じ,配合によってばらつきの大きさに影響が生じることが確認された.鉄筋のあきによる測定結果への影響は確認されなかった.
この研究を通して単位水量測定によるコンクリート品質評価が可能であることが確認された.

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