高橋毅

新潟県沿岸部におけるコンクリート橋の塩害劣化の実態調査と塩害耐久設計に関する一考察

丸山久一

新潟県を含む日本海側の地域では約30年前から塩害の問題に悩まされてきた.塩害に対する耐久設計法は,2001年度版コンクリート標準示方書[維持管理編]で初めて明記された.塩害に対する耐久設計法が提案されてから10年が経過した今,今後の耐久設計の信頼性と合理性を確実なものとするためには,塩害の実態を今一度見直し,塩分浸透予測に基づく現行の耐久設計手法の妥当性を確認することは不可欠である.そこで本研究では,新潟県沿岸部に供用されている橋梁の現地調査を行うことで,橋梁ごとの塩害劣化の評価を行い,現行の耐久設計法にて算出される劣化推定年数との比較を行うことで耐久設計法の妥当性を確認した.
新潟県沿岸部(海岸から500m以内)に供用されている橋梁は335橋であり,この内の67%で塩害劣化が生じていることが現地調査より明らかとなった.橋梁ごとの供用年数と海岸からの距離の関係を見ると,供用年数が多いほど,また,海岸からの距離が近いほど劣化が進行している傾向が確認された.次に,塩害対策以前の仕様規定の諸元を現行の耐久設計法に適用し,劣化推定年数を算出した.この結果,現在供用されている橋梁は全て,現行の耐久設計法によって算出された劣化推定年数よりも遅くに劣化していたことから,現行の耐久設計法は安全側の評価を与えることが確認された.
現地調査を行う中で,かぶり不足が原因で塩害劣化が進行していた橋が多く見受けられた.これを受けて,かぶりが塩害劣化に与える影響を確認するため,かぶり測定調査を実施した.この結果,近年ではかぶりが確保されているが,大量に橋が建設された高度経済成長期(30~40年前)以前では仕様規定以下のかぶりが多く見受けられ,かぶりが小さいほど劣化が進行している傾向が確認された.また,測定したかぶりと現行の耐久設計法を用いて,現在の鉄筋位置での塩化物イオン量を推定した結果,現地調査の健全・劣化の評価と概ね一致する結果となり,実際のかぶりを用いることで塩化物イオン量の推定精度の向上が見られた.
現行の耐久設計法による塩化物イオン量の推定では海岸からの距離が近い場合に,推定値が過大となる結果となった.そこで,推定精度向上を目指し塩分浸透流束を用いた数値解析を実施した.その結果,塩分流束を用いることで,海岸からの距離が近い場合の推定精度が上昇した.以上より,現行の耐久設計法による塩化物イオン量の推定の妥当性は高く,さらにかぶりや塩分流束などの実際に近い状態を仮定し推定することで精度が上昇することが確認された.

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