米江駿介

石川県内灘海岸における離岸流による海浜事故原因解明のための基礎的研究

犬飼直之

近年,石川県の沿岸域は土地利用の高度化に伴って海洋性レクリエーションの場としての需要が増大し,多くの人々によって楽しまれている.しかし海水浴中の水難事故も多く,死亡事故などの重大事故も毎年,後を絶たない.海水浴中の事故には幾つかの要因があるが,その中の1つに離岸流がある.離岸流とは沖向きの強い流れのことであり,地形や波浪条件が主な原因であると考えられている.既往研究により,砂浜海岸での離岸流の発生理論は提案されているが,研究例が少なく未解明な点が多い.本研究の目的は石川県内灘町内灘海水浴場を対象として内灘海水浴場を含む石川県内の海浜事故を調査し,そのときの地形,波浪特性,海象状況から離岸流のメカニズムを解明することである.2008年〜2013年の石川県内の海浜事故件数及び発生場所をまとめると,内灘海岸を含む中部エリアの被害が顕著であった.中部エリアの海岸を調査してみると,離岸流が発生しやすい地形,及び場所を有していることが分かった.
次に石川県内の波浪特性を調査し,離岸流事故の影響を考えた.その結果,石川県は北西〜北の波向きが卓越していることが分かった.離岸流による事故時の波向きも北西〜北が多いため,日常的に流れる波で離岸流が発生する可能性が高いといえる.次に内灘海岸の離岸流事故を様々な観点からまとめ,原因解明した.内灘海岸における離岸流発生時の波向は北北西からの波が最も多く,他の方角からの事故は少なかった.金沢港沖夏季の波向は北北西が卓越しているので,内灘海岸では日常的に流れる波で離岸流が発生していることが考えられる.事故発生時の波高は0.5〜1.0mが最も多く,平穏な波で離岸流が発生していると考えられる.また,内灘海岸の日常的な天気図と離岸流事故日の天気図を比較すると,それぞれ天気図が異なることがわかった.
次に内灘海岸の地形データから,地形計算を行い,海岸に入る波の動向及び流速分布を把握した.その結果,低い波高のときでも,防波堤付近では流れが複雑かつ速いため,とても危険であることがわかった.結論として,石川県内では内灘海岸での海浜事故がもっとも多く,日常的な穏やかな波で事故が起きていた.よって,常に事故は発生しやすい状態なので注意が必要である.また,海洋構造物付近では流れが複雑化しているため,その付近で泳がないことが事故防止に繋がるであろう.今後の課題として,現地観測を行い,内灘海岸の離岸流を解明し,防波堤延伸の影響を明確にする必要がある.



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