大清水 峻介

津波来襲時の住民避難のためのシミュレーション法の開発と実海岸への適用

細山田 得三

日本は世界でも有数の地震大国である.いくつものプレートが交差している日本は地震が起こりやすく,津波も起きやすい.また,南海トラフでの地震は,今後発生する可能性が非常に高く,津波の危険性も高い.この津波の対策を考える必要がある.
本研究では神奈川県鎌倉市を対象領域として,マルチエージェントシステムとGoogle Earthを用いて,避難行動の手助けとなる浸水状況のアニメーションを作成することができるシミュレーション法を開発し,実海岸への適用することを目的とする.
今回,マルチエージェントシステムでシミュレーションモデルを作成するためにartisocを用いている.このartisocは,プログラミング初心者でも簡単に扱えるユーザフレンドリーなツールである.
シミュレーションモデルを作成するにあたって,交差点座標情報,浸水開始情報,避難者情報,最短経路情報が必要となる.
津波解析についても説明する.流体運動は非圧縮性流体を仮定するため,ナビエ・ストークス方程式と連続式によって支配される.数値計算の基礎方程式は,これらの式を鉛直方向に積分して水深で除することにより,平面二次元とした非線形長波方程式を用いる.ただし,水塊が不連続となった場合には,後述する越流公式を用いる.
今回は3か所の避難所を設定し,それぞれのシミュレーションを行い,それぞれの死亡率を比較する.これによってどの避難所がよいか検討した.鎌倉市に津波が来襲した場合,鶴岡八幡宮が避難所として適しているといえる結果になった.次いで妙本寺を避難所とした場合の方が御成中学校を避難所とした場合よりも僅差で死亡率が低い結果となった.
本研究では神奈川県鎌倉市を対象領域にして,避難シミュレーションモデルで生成された画像を繋げてアニメーションにしたり,画像をGoogle Earthに取り込ませ,立体表示にして視覚的にも見やすいものにした.これは本研究の目的である「避難行動の手助けとなる浸水状況のアニメーションを作成することができるシミュレーション法を開発し,実海岸への適用する」を達成している.
今後の課題として,より実用的な避難シミュレーションモデルにするために,避難経路と避難所の選択肢を増やす,津波の浸水速度に違いを出す等が挙げられる.また,避難シミュレータモデルの処理の高速化も考えたい.

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