澤田 命

避難主体の個性を考慮した河川氾濫の避難シミュレーション

細山田 得三

 近年ではアニメーション形式の動くハザードマップが整備されているが,それでも避難者の動きが一様であるなどまだ実際の避難に即しているとは言えない.そのため避難者にパニックや動揺といった不明瞭な値を付加した動的なモデルを作成する必要がある.本研究ではまず,マルチエージェントシステムと,氾濫解析による結果を合成することにより,避難行動の手助けとなる浸水状況のアニメーションを作成した.さらにそれを用いて対象領域内部のいくつかの避難所の安全性の評価を行うが目的である.
 今回の避難所は柳原分庁舎とアオーレ長岡で,そこへ逃げるにあたって避難に対して理想的な動きとそうでない動きをするモデルを作成した.また,それらのモデルの内浸水域が最も広い氾濫解析を採用したもので,避難開始時刻を10分ずつ遅らせた場合もそれぞれ検討した.効率的な動きをするモデルで避難所が柳原分庁舎の場合,30分後に避難した人間のうち19.22%の人間が波に捕まった.対して避難所がアオーレ長岡の場合30分後に避難した人間のうち58.03%もの人間が波に捕まり,避難所へ辿り着けなかった.非効率的な動きをするモデルで避難所が柳原分庁舎の場合,30分後に避難した人間のうち21.63%の人間が波に捕まった.対して避難所がアオーレ長岡の場合30分後に避難した人間のうち63.13%もの人間が波に捕まり,避難所へ辿り着けなかった.このことから,今回のシミュレーション・モデルでは柳原分庁舎が避難所として適していることになり,また避難行動に迷いが生じた人間が存在するモデルだと被害者の割合も増加することがわかった.

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。