ken13107

西川裕貴

圧裂試験によるアスコンの引張変形評価に関する基礎的研究

高橋　修

　道路におけるアスファルトコンクリート舗装には走行荷重や温度応力などの引張応力を受けることが多く，アスファルトコンクリート（以下アスコン）の引張変形を評価することは重要である．アスコンに対する引張変形評価試験として，我が国では四角柱状の供試体に長軸方向に引張応力を与える直接引張試験が主に研究を目的として実施されている．しかし，直接引張試験は作業が煩雑であり，多くの時間とコストを要する．
　そこで，本研究ではより簡便なアスコンの引張特性評価法としての圧裂試験に注目した．圧裂試験は円柱供試体の側面から圧縮力を加え，間接的に水平方向への引張応力を作用させるというものであり，従来から引張強度の把握を目的に行われてきた．平成22年の「舗装再生便覧」の改訂により，圧裂試験による新たな変形評価指標として圧裂係数が導入された．圧裂係数は圧裂試験で測定した破壊時の応力を垂直方向の変位で除すことによって算出される．しかし，圧裂試験によるアスコンの変形量は評価指標としての有意性が確認されていない上に，圧裂係数は本来の引張変形方向でない垂直方向の変位を使用し算出する．そのため，物理的意味が不明である．
　以上のような背景を踏まえ，本研究では圧裂試験で測定されるアスコンの変形量が引張特性の評価指標として有効かどうかを検討するとともに，圧裂係数の算出時に利用する垂直変位の有意性を検証することを目的とし，直接引張試験と圧裂試験によるアスコンの引張特性の比較を行った．供試体は骨材の最大粒径が13mmの密粒度アスファルトコンクリートである．バインダーはストレートアスファルトおよびポリマー改質アスファルトⅡ型を使用した．
　これらの検討より，以下の知見が得られた．
　①圧裂試験は引張強度の測定は可能であるが，変形量によりアスコンの物性を評価することは難しい．直接引張試験と同様の傾向が得られなかった要因の一つとして，圧縮作用時に骨材同士がぶつかり合い，変形量に影響を与えたことが考えられる．
　②圧裂試験による垂直変位と水平変位には相関関係が得られなかった．よって，圧裂係数の算出には水平変位を使用することにより精度を高めることができるといえる．

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