氏名   岩野 幸太

論文題目 荷重測定型伸度試験におけるデータ処理方法の提案

指導教員 中村 健

 一般的にバインダは劣化が進行するにつれて硬く脆くなる性質である.この性質を利用してバインダにおける性能は針入度試験,伸度試験,タフネス‐テナシティ試験などで評価しているが,粘弾性の違いを評価できないことや試験機構に問題があるというのが現状である.
 これを踏まえ,既往の研究では新たな評価手法として荷重測定型伸度試験(以下,FDT)を提案している.本試験は,ロードセルを搭載した伸度試験機でバインダが延伸される際の荷重と変位を測定する試験である.試験結果として荷重・変位曲線が得られ,この曲線からFD値を算出することでバインダの性能評価を行う.FD値はバインダの粘結力部分の面積を数値積分して算出するが,これまでの研究では算出方法が一つに統一されていなかった. FD値とはアスファルト混合物の疲労破壊回数と高い相関があることが分かっているため,バインダの疲労破壊抵抗性を示す指標として考えられている.昨年は,荷重・変位曲線の荷重ピーク値以降の面積をFD値としていた.しかし,このFD値はタフネス・テナシティ試験のように接線を引いて算出した場合と差が生じることが問題とされていた.これを踏まえ,本研究では接線の引き方を定め,新たなFD値算出方法を提案する.
 本研究でのFDTの結果から,昨年の方法でFD値を算出した場合,FD値の傾向が横一線となり,この方法ではバインダ性状の変化が読み取りにくい結果となった.今回提案した算出方法の場合,FD値は明確に右下がりの傾向を示し,バインダ性状を評価しやすくなった.また,提案した方法によるFD値は昨年の方法でのFD値よりも低くなったため,タフネス‐テナシティ試験の結果に近づけられたと考えられる.
 昨年の研究では再生骨材として再利用可能とする基準値をFD値800(N・mm)以上としていたが,昨年と本研究ではFD値の算出方法が異なるため,今回新たに基準値を設定しなければならない.そこで,針入度の結果と提案した方法によるFD値の関係から,ストアスが針入度19(1/10mm)のときにFD値は49(N・mm)であった.これより,本研究では再利用可能とする基準値をFD値50(N・mm)以上と新たに定めた.
 タフネス‐テナシティ試験の手法を模したFD値算出方法を提案した結果,劣化に伴う性状の変化をより良く再現することができた.また,既往の研究と同様にFD値と疲労破壊回数との間に相関が見られたため,提案した算出方法は今後FD値を求める際に有効であると考えられる.

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