氏名 鈴木 健太

論文題目 供用中の高速道路におけるアスファルト舗装の損傷状況とその要因に関する研究

指導教員 高橋 修

高速道路アスファルト舗装の修繕は,表・基層一体のみを部分的に取り替える工事を行うことが主流である.そのため,アスファルト安定処理上層路盤(以下,アスベース)や下層路盤では,供用年数の経過に伴う脆弱化が深刻な問題となっており,近い将来,多くの路線で路盤層からの全層打換補修が必要になると予測されている.その際の舗装構造と使用材料は,更なる長期耐久性を担保する仕様が求められるが,それを実現する具体的な補修設計法は確立されていない.また,機能性舗装の普及や多様化も関係して,長寿命化技術の開発に必要な基礎資料が不足している.
舗装長寿命化の技術開発には,実舗装体の損傷状況を把握することが必要である.そこで,本研究では,高速道路舗装の長寿命化を目指した技術開発の基礎的研究として,長野県内における二つの高速道路の路線で実施した開削調査の結果を分析,検討した.そして,実舗装体における損傷の状況を把握し,損傷程度と発生要因を舗装構造および使用材料の面から評価した.舗装構造については,FWDによるたわみ測定等の結果から,舗装構造全体と下層路盤および路床の支持力を評価した.使用材料は,アスファルトコンクリート層(以下,アスコン層)のわだち部と非わだち部において静的曲げ試験と曲げ疲労試験を実施し,ひび割れ抵抗性と疲労破壊抵抗性を評価した.
その結果,アスコン層の厚さが大きく,下層路盤や路床が健全な状態である箇所は,路面から下方へ進展するひび割れが確認されたが,舗装構造全体の支持力はかなり大きいことがわかった.一方,下層路盤や路床の支持力が十分でも,アスベースの層厚が薄い箇所や,下層路盤に永久変形が生じていた箇所では,アスベース底面から上方へ進展するひび割れ(以下,ボトムアップクラック)が確認された.また,下層路盤に永久変形が生じていた箇所は,舗装構造全体の支持力が最も小さかった.
各アスコン層のひび割れ抵抗性を比較すると,表層が最も高く,順に基層,アスベースと低くなることがわかった.また,交通による繰返し荷重はアスコン層のひび割れ抵抗性および疲労破壊抵抗性を低下させることも確認された.
本研究より,下層路盤の永久変形に起因するボトムアップクラックの発生がアスファルト舗装にとって致命的な損傷であり,ボトムアップクラックが生じ難く,かつ進展し難い舗装構造,舗装材料が重要であることを確認した.

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。