神尾直樹

格子パネルで補強したアスコンによる可撓性踏掛版の性能改善に関する基礎的研究

高橋修

橋台背面アプローチ部に踏掛版が設置されていない場合,大規模地震によって路盤が沈下すると,大きな段差が生じて車両通行が困難になることがある.砕石や土のう等の応急復旧によって通行が可能になるが,地震発生直後から復旧作業が完了するまでの間に通行不能な時間帯が存在することになるため,このような段差は被災者の初動行動には大きな影響を及ぼす.踏掛版が設置されていない橋台背面に対し,維持修繕工事で鉄筋コンクリート踏掛版を増設することは難しく,安価かつ短期間で施工可能な段差抑制工法の開発が求められている.そこで本研究では,維持工事レベルで施工可能な段差抑制工法として,格子パネルで補強したアスコンによる可撓性踏掛版について検討した.
可撓性踏掛版の施工実績は約300箇所あるが,地震等による大きな路盤沈下の経験が少なく,その適用性や性能に関する基礎的データが十分でない.本研究では,使用するアスファルト混合物の違いに対する可撓性踏掛版の変形特性の差異について,室内試験によって検討した.静的曲げ試験および曲げクリープ試験によって,可撓性踏掛版単体の曲げ強度とたわみ追従性について評価し,引張試験によって,可撓性踏掛版に適した骨材配合およびバインダについて検討した.また,疑似的なコンクリート構造物に片側を固定した可撓性踏掛版を施工し,その上に通常の表・基層を舗設した試験舗装体を構築して,疑似構造物をジャッキアップする実物大路盤沈下試験を実施し,橋台背面アプローチ部の段差を再現した.そして,それに対する可撓性踏掛版の変形をモニタして適用性を評価するとともに,材料および構造の仕様を変化させた場合の変形挙動を比較し,その性能の差異を評価した. さらに,小型の消防車を想定した車両を繰り返し通行させた時の変形をモニタし,可撓性踏掛版の耐久性を評価した.
これらの検討により,可撓性踏掛版は段差抑制工法として実用性が高く,50cm程度の路盤沈下に対してもスロープ状に変形して車両通行を阻害しない舗装表面を提供でき,短期的には十分な耐久性を有することが確認された.また,可撓性踏掛版に使用するアスファルト混合物を見直すことによって段差抑制効果を向上でき,粘着力が強く骨材を強固に結合するバインダを使用することでより高い効果が得られることがわかった.

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