古川 侑大
大河津旧可動堰構脚橋の安全性評価
宮下 剛
大河津旧可動堰は昭和6年の竣工以来,越後平野の洪水氾濫防止,水利用に大きな役割を担ってきたが,老朽化により平成15年に旧可動堰の改築工事が決定され,平成24年に約80年の供用を終えた.旧可動堰の一部は,現地に残置されることが決定されているが竣工から約80年経過しているため,耐震性能を含む安全性の評価が課題となってくる.
本研究では,耐震性能を含む安全性の評価のために三次元骨組みモデルを用いた時刻歴応答解析を行った.
具体的には,旧可動堰の撤去にあたり残置される旧可動堰構脚橋にて,現地振動計測を行った.振動計測結果から固有振動数と固有振動モードを同定し,設計図面から三次元骨組みモデルを作成した.モデルの作成では,腐食に対する鋼板添接部材は無視した.また,現地の構造と設計図面では部材が切断除去されている箇所もあり一部異なる.そこで,設計当時の健全モデルと現況を把握した部材切断モデルの2つのモデルを作成した.部材切断モデルと現地で実施した振動計測試験との比較を行うとともに,作成したモデルに地震動を入力し時刻歴応答解析を行った.地震動はL1地震動1波,L2地震動タイプⅠ,タイプⅡをそれぞれ3波ずつ,橋軸方向(X軸)と橋軸直角方向(Y軸)の2方向にそれぞれ入力した.これらの解析結果から各部材に生じる応力度をそれぞれ算出し,許容応力度内の収まっているかを照査することで耐震性能を評価した.以下に得られた結果を述べる.
1) 作成したモデルと現地で行った振動計測から得たモード形は概ね一致したが,固有振動数には差異がある.
2) L1地震動に対しては橋軸方向,橋軸直角方向のどちらに地震波を入力した場合でも,許容応力度を超過する部材はなかった.このことから,L1地震動に対する耐震性能には問題がないと言える.
3) L2地震動に対しては,タイプⅠ,タイプⅡとも下横構,下横構斜材,構脚部斜材,対傾構垂直材で,発生する応力度が許容応力度を超過した.タイプⅡでは,加えて構脚部水平材で応力度が許容応力度を超過した.
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