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野本将太

新幹線による地盤振動を低減するための振動遮断壁に関する研究

豊田浩史

列車振動に対し，防振溝・壁による振動低減効果があることは，理論的な考察やFEMなどによる解析的な検討から成果が出ているが，実際の振動伝播機構の解明や効果の高い防振壁材料の特定にまでは至っていないのが現状である．そこで，本研究では，新幹線振動の低減を目的とした防振壁を設計するための基礎的な実験データの収集を行う．新幹線振動の伝達機構を解明し，防振壁による振動低減効果の検証を目的とする．本研究では，①現地計測，②要素試験，③模型試験の3種類の試験を実施した．
現地計測においては，新幹線通過時の振動にピーク周波数が確認でき，計測データよりピーク周波数帯を分類した．分類した周波数帯は，①超低域：4~5 Hz，②低域：8~20 Hz，③中域：20~30 Hz，④高域：40~80 Hz，⑤超高域：100~200 Hzの5分類である．また，車両（編成），計測場所（橋脚・地盤）によって，ピーク値の卓越する周波数が異なる結果となった．編成が同様の場合には，車種によって周波数特性は異なることが明らかとなった．
要素試験では，防振壁の材料について検討した．防振材は，①ウレタン，②NRスポンジ，③真鍮，④アルミ，⑤アクリル，⑥超軽量気泡モルタル，⑦カオリンの順に防振効果が高い結果となった．柔らかい材料を用いた地中壁は，振動対策工として，効果的であるといえる．また，インピーダンス比と防振効果の関係は，インピーダンス比が1より離れるほど，防振効果が高まる傾向を示した．
模型試験では，基礎形状や計測深度により，周波数特性に違いが現れることが明らかとなった．また，z方向（鉛直）加振では，理想的な距離減衰傾向を示さず，加振点から離れた箇所で増幅傾向を示す場合があった．このような傾向を示すケースでは，鉛直・水平方向の加速度・変位の軌跡において，ループ軌道を描く場合があり，鉛直成分の振動のほかに，レイリー波のような表面波が発生している可能性がある．防振壁挿入時の模型振動実験では，加振方向によって，限られた周波数で防振効果を示すことが明らかとなった．杭基礎加振においては，防振効果が確認できる周波数帯において，防振壁の根入れ長が深いほど，防振効果が高い結果となった．これは，杭基礎のように加振点が地中にある場合は，加振最深点よりも防振壁根入れ長を深くすることで，高い防振効果が発揮できると考えられる．

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