蓮池響子

中越沖地震における仮設住宅の実態調査と分析

指導教員 大塚悟


災害により住宅を失った世帯は,新たな生活の場を確保しなければならないといった問題が発生する.その最も早急な手段の一つとして,応急仮設住宅への入居が挙げられる.応急仮設住宅に関する業務は「仮住まい」として文字通り一時的な対応のみで完結するという印象を与えかねないが,実際はそこで生活を営む入居者にとっては生活の基盤であり,自治体にとっても,被災した人と居宅を結び付ける手順は災害発生直後から新たな日常へ復旧・復興への手助けのために欠かせない業務である.
本研究では,中越沖地震を事例として,災害による被害で応急仮設住宅に入居を希望する人が,市役所に申請を行う際,どの地域の仮設住宅を希望していたかを調査し,仮設住宅建設地の最寄りの公共施設を把握し,仮設住宅入居における住民のニーズの検討を行う.そして,仮設住宅への入居配分の在り方や,どういった立地条件に仮設住宅を建設したら効果的であるか,について評価を行うことを目的とする.地理情報システムを用いて各仮設住宅から駅やバス停,スーパーやコンビニ,また病院,市役所までの距離測定を行い,入居日数の時間経過における退去率で分析を行う.
本研究での分析により,仮設住宅のタイプを四つに分けることができた. 長期支援タイプは,柏崎駅周辺の周辺環境が便利な場所が集中していて,不特定地域からの入居者が多い.再建支援タイプは,被災住所から仮設住宅までの距離が短い地域であり,地域のコミュニティ形成を重視している.併せて退去率をみると,半年と一年を過ぎた期間で,退去者がまとまって増えている.これは,被災者生活再建支援制度の適応条件の「仮設住宅を利用しないこと」が入居期間に大きく影響していると考えられる.そして,自立再建に向けての行動が早いことから,再建支援タイプと設定した.コミュニティ重視タイプは,被災住所からの仮設住宅までの距離が比較的近い傾向にある.しかし,被災者生活再建支援制度の影響は少ない傾向にあるため,コミュニティ重視タイプと設定した.評価項目での数値で以上の三つに属さないタイプを標準タイプとした.長期間滞在する入居者・再建を予定している入居者どちらも兼ね備えた,一般的な仮設住宅の型である.
震災直後の仮設住宅入居申込み時は,第一次被害判定結果であり,それ以降に入居者が増えることにより,戸数を増やさなければならないという課題があった.これを改善するために,仮設住宅の建設を急ぐこと,また建設地を早く決定する必要がある.本研究では,仮設住宅に入居する世帯がどのようなニーズを求めているか分析を行い,どのようなタイプの仮設住宅をどこに建設したら良いか,その入居配分とその評価項目を提案することができた.

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